2003.6.7
 みなしごのバラード


仕事の後飲みに誘われ、夜遅くに とある店に入りました。

カウンターのあるバーというのかスナックというのか、で、カラオケが当たり前のように装備されており、決して静かでない"ママ"と1〜2名くらいの女性がいるという・・・。ありますよね?そういうお店。
サラリーマンの方々がこれら女性陣とそれなりに盛り上がっており、メーカー・商品名等一切不明のウィスキーは止めどなく供給され、 演歌系・石原裕次郎系を中心に カラオケもまた止めどなく流れている・・・といったあたりが概ね定番の要素でしょうか。

別にエッチな店という訳でもなく、何か大々的な特徴があるわけでもないのですが、 就職して初めて職場の上司にこの手の店に連れて行かれた時は、こんな世界もあるのかと結構カルチャー・ショックを受けたもんです。


で昨日入ったのもそういう店だったのですが、カウンターの一番端に1人の男性が座っており、ママにリクエストされて何かちょっとだけ歌ったところ、 これが上手いのです。
ブルース、ジャズといったジャンルではなく、"正統歌謡曲"という雰囲気の声。
これは絶対プロだなと思ってこっそりママに聞きましたら、新田洋さんという方で、「タイガーマスク」の主題歌を歌っていた方だとのこと。

え!?タイガーマスク!
暗いにも程があるストーリーと凄惨なタッチ。
子供の頃の私は怖くて見られなかったのですが、あの主題歌だけは、もともと歌の上手いアニメ主題歌歌手の中にあっても群を抜いていたように思います。
これはこうしてはいられないと思い、ちょとだけお話しさせていただけないかと伺いましたら快く応じてくれ、当時の話を色々と聞かせてくれました。
いやー、面白かったですよ。

新田洋さんの歌と言えば、タイガーマスクの主題歌はもちろんのこと、物語の哀しさにトドメをさすあのエンディング。そう、「みなしごのバラード」です。
僭越ながら、ハーモニカ・ホルダーを肩にかけての弾き語りは、高校時代から私の重要な出し物の一つでした。

そんなことを話しましたら、新田さん 大変喜んでくれまして、なんと!カラオケで「みなしごのバラード」を歌って下さったのです。
私はこの手の店にカラオケが導入されていることに、生まれて初めて感謝しました。
♪あたたかい人のなさけも 胸を打つあつい涙も 知らないで育ったぼくは みなしごさ・・
素晴らしい歌でした。
当時、歌の内容があまりに悲しく、レコーディングの時も泣けてきたとおっしゃっていましたよ。




2003.6.14
 トドのショー


ニュースでとある水族館のイルカショーの話題が放映されていました。
それは見事なもんで、こうした施設の動物の皆さんの芸は高度化の一途をたどっているようです。
しかしこんな時代であるからこそ、私はここで室蘭水族館のトドのことを書き留めておかねばなりますまい。


市立室蘭水族館は町のはずれの祝津町に位置しており、私が就職直後から4年を過ごした祝津寮もこの水族館のすぐ近くです。
深夜になるとトドの遠吠えが寮の部屋にまで聞こえてきて、それはもうシュールでした。
そもそもこの祝津という一帯が 海沿いの荒涼とした場所で、よもやここに水族館が存在していようとは思えぬロケーション。
細い道道(県道)の一角を左に曲がると原野のようなスペースに、古い建物が平和にたたずんでいます。


水族館の料金は大人300円、子供150円と大変リーズナブルなのですが、館内の水族のラインナップもこれまた日常よく見かけるものが中心で、 料金とサービスのバランスは低いレベルでとれていると言えます。

そして、この室蘭水族館のメインの出し物がトドのショー。
私は室蘭に住んでしばらくして水族館の存在を知り、そのたたずまいのあまりの魅力につい入ってしまったのですが、 そこで見たトド・ショーは深く私の記憶に刻まれました。


トド・ショーは、水族館の前の広場に常設のプールで行われます。
この日、館内で水族を観察していた私の耳に、トド・ショーの開催を告げる館内放送が。
これはと思い、急いでプールの所まで行きましたら、家族連れや友達同士の子供が決して多くない数で集まっています。
ザブーンとトドが入ってきて、「さあ、お友達の皆さん。これからトドのショーの始まりですよ!」という係の方の声。

さて、事前のアナウンスによるとここのトドの最大の特技は字を書くこと。確かによく見るとトドは既にマジックのようなものを口にくわえており、プールサイドのあたりにホワイトボードが用意されています。


 「それでは、トドさん。あなたのお名前は?」
すると突然ザバーッとトドが水中から姿を現し、ホワイトボードにガンガンガンガン・・・と、口にくわえたマジックを打ち付けました。
ホワイトボードには縦の線が6本入っただけで、どうやら失敗した模様。会場もシーンとなってしまっています。

 「はい、よくできましたー!!」
ええっ!!??

「上手ですねー、トドと書けました。皆さん拍手ー。」
私は半信半疑でホワイトボードを凝視しました。
確かに2本目と4本目がほんの少し斜めのような気がしますし、5、6本目も 言われてみれば短いような気が。しかしこれを「トド」と読ませるにはあまりにも強引では??

予期せぬ事態に取り乱している私の耳に、容赦なく「では次は、トドさんの覚えた新しい言葉です!」という係の方の声が。

ザバーッ。ガンガン・・・。
これも縦の線が4本入っただけでどう見ても失敗なのですが、もはや油断はならぬと凝視している私の耳に 既に「はい、よくできましたー!!」という係の方の声。 し、しかし今度は一体何と書いたと言うつもりなのでしょう。
「上手ですねー、今度は 『トリ』 と書けました。皆さん拍手ー。」
「いや、しかしそれは・・・」
呆然とする私の前でご褒美の魚をたくさんもらったトドはこれで全ての出し物を終え、余裕の表情で自分の水槽へと帰って行ったのです。

*

ところでふと私はこうして書きながら、何しろこんな水族館ですから既につぶれて無くなっているのではと不安になり、 検索サイトで"室蘭市立水族館"と入力して調べてみましたが、幸い大丈夫なよう。
なお、ヒットしたサイトには以下のとおり紹介されていましたので、転記しておきましょう。
室蘭市にある水族館。1953年に道立室蘭水族館として開館。のち室蘭市に移管された。字を書くトドのショーが有名。




2003.6.29
 阪神タイガース


よく言われる話ですが、阪神ファンの中には、その勢いの良さの反面、長年の不甲斐ない戦いを通してすり込まれた被害妄想感やコンプレックスのようなものが 共通のものとして存在し、 場合によってはちょっとくらい長く首位にいたとしても、「そのくらいで騙されるものか」と歪んだ感情を抱いたりして、いろいろと複雑なのです。

ちなみに我が家(実家)はなぜか全員阪神ファンなのですが、誰が最初に好きになったかという、絶望的に低レベルの争いが決着しないまま懸案として存在しています。
間違いなく私で、そう主張するに足る状況証拠を積み上げているのですが、弟も訳の分からない切り口で主張を降ろさず、ついでに父と亡くなった母も何らかの 主張を始めるため、議論は硬直したまま現在に至ります。


しかし最近、さすがに今年は優勝するのではと言って良いような気がしてきました。
4月、5月と、何度このコトを書こうかと思ったか知れませんが、書いた途端に落ちていくのではという恐怖心がそれをさせないうちにとうとう6月末まで来たのです。
同様に好調だった昨年は、サッカーW杯の開催でほんの一瞬注視を怠っている間に人知れず転落しており、W杯終了時にはそれはもう驚いたもんですが、 今年はW杯もありませんし、他に何か世界的イベントもないはずです。

前回の優勝の時は私が大学生の時で、遅くまで大学にいた後、せめて優勝決定のニュースだけでも見ようと、深夜ものすごい雨の中をチャリで家に向かっていた時のことだけ 鮮烈に記憶しています。

まあいずれにしても この時期首位にいるくらいではしゃぎ過ぎないようという自制心が経験的に働いてしまいますが、本場・大阪ではとなると、 例の「純金のノムさん人形」みたいな途方もなくバカげた品が登場したりするので、やはり関西の方は、一瞬一瞬を楽しもうという感覚がより優れているのだなと感心します。