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2009.9.6
宮古の秋刀魚


目黒のさんま祭り、行列は最大1.5キロメートル
これは「品川経済新聞」なる地域情報サイトの、本日のトップ項目見出しです。
同イベントは、岩手県宮古漁港直送の新鮮なサンマ6千匹を炭火焼きにして無料で振る舞う初秋のお祭り。

時折書きます通り、私は10年前にこの岩手県宮古市に勤務しておりましたが、1年半にも満たない宮古生活で、その地域と人の魅力に完全にヤラれました。
いま思い出しても、国道106号の乗合バスもしくはJR山田線で、盛岡から2時間かけて行きたくなります。


さて、その人口6万人の宮古市が年に一度有名になるのが、上記の「目黒のさんま祭り」。
昨年の来場者は約1万2000人だったらしいのですが、今年は更に約1万6000人にまで増えて、午前11時の時点で最大1.5kmの行列ができたとのこと。
イイぞ!宮古のさんま!!

3時間並んで無料さんまを手に入れたという浅川さん一家(江戸川区在住)は、「朝の8時から並んで食べたさんまの味は格別」とのコメント。
イイぞ!浅川さん一家!!


というわけで今年も目黒のさんま祭りは盛況だったようですが、実はこの記事の興味深いのは、比較的長い全文を読んでも、なぜ目黒でさんま祭りをやっているのかという背景、即ち古典落語の「目黒のさんま」にちなんでいるという記述がどこにもないこと。

記事の対象が書き手にとって馴染みがあるあまり、縁もゆかりもない一般読者に対する説明を欠いてしまった記事というのを稀に見かけますが、ここは「品川経済新聞」。
他の事件ならいざ知らず、「目黒のさんま」を知らない品川っ子など万が一にもあり得ないという、文化の圧倒的な浸透度合を体現したものと理解してみました。
イイぞ!品川っ子!!




2009.9.12
蚊の行動


信じたくない話ですが、5夜連続で蚊に刺されました。

今年は東京も例年より涼しく、過去に経験した殺人的残暑を思えば、既に完全なる秋という過ごしやすさです。
都内の蚊の皆さんも、そろそろ自分の死期をイメージし始める頃・・・。
そう油断した瞬間から、5夜連続で蚊は血液を採取していったのです。
恐るべき蚊の洞察力。


私は元々蚊取線香好きで、ブタの形状をしたお馴染みの蚊遣と共に、時には蚊の気配がない平時ですら蚊取線香を作動させている程です。
従って先週日曜日、蚊に刺された痒みで起きた私は、速やかに、今シーズンはもう使用することがないだろうと思っていた蚊取線香を取り出し、着火しました。
おかげで、やや季節外れの線香の匂いが長女・桜の校帽に移ったという影響を除き、平穏な夜が過ぎたのです。

ところが月曜の夜、私は再び蚊の餌食となりました。
「どこから入ってきているんだろう」と家中で真剣な議論を交わしながら、再び蚊取線香に着火する私。

それが信じがたいことに火曜の夜、そして水曜の夜と続くのです。ほとんどオカルト映画。
こちらも負けじと蚊取線香を投入し続けているため、部屋はすっかり新手のアロマテラピーでも始めたかのような空気に満ちています。

しかしそんな犠牲もむなしく、木曜の夜、私は五たび蚊にさされました。
まるでイチローの連続安打(敢えて例えればこちらは死球)のような記録更新に、ついに私は職場の後輩に、今週一週間の大変な状況と、どんなに蚊取線香で蚊を仕留めても、毎晩必ず新しい蚊が現れてやられているのだ、ということを熱く話しました。

すると、後輩から、
「幸さん、それは毎晩、単に隣の部屋に逃げているだけなんじゃないでしょうか」
との、(私にとっては)思いがけぬ言葉が。

ん・・・、なるほど。
確かに蚊取線香を全力でたいている寝室のドアは開いたまま。
私は蚊取線香を愛するあまり、着火しさえすれば所定の効果が得られるものと盲信していました。
しかし、たかが蚊取線香に、家内全室の生き物を死滅させるような威力があるとは思えません。
というか、そんな威力だったら3日目くらいには自分も死んでいることでしょう。

そうか、蚊は毎日適量の血液を採取した後、蚊取線香がたかれると、「お、これは大変」とか言いながら隣の部屋で一晩を過ごし、翌晩、また血液を・・・ ってなってるんですね。


考えてみれば恐ろしく当たり前のことであり、周囲の他の後輩達も、指摘するまでもない事としてそれに頷いています。
私も慌てて 「まあ、そうだとは思うんだけど、おかしいんだよなあ・・・」などと、自分も先刻理解していることを前提とした軌道修正を試みましたが、恐らく見透かされていたことでしょう。




2009.9.23
三陸と星占い


先週、三陸時代の部下だった宇部君と、前回の東京暮らし時代の部下だった大江君と、偶然それぞれに「久しぶりに会いましょう」という話となり、日程調整の結果、結局同じ日の深夜に合同で飲むことになりました。
実に強引な調整ですが、大江君は数年前の秋田勤務時代にあの「なまはげ伝道士」>>の資格を取得した強者で、東北つながりとしてのマッチングは申し分ないと言えます。

ちなみに三陸時代の部下だった宇部君は、その後転勤を繰り返しつつ、現在再び三陸勤務となっており、10年前に行っていたお店や飲み屋さん等がどうなっているか−といった「三陸のいま」を知ることができ、有意義でした。
ちなみに潰れたという店は一軒もなく、さすが三陸。世界同時不況だなんだといったって、生命力が違うのです。

当時の若手のみんなも、東北管内のそれぞれの場所で、元気に頑張っているよう。
それでも10年過ぎているわけですから、28歳だった者なら38歳だし、30を過ぎてた者ならもう40。
みんなどんな感じになっているのやら。一生に一度で良いので、三陸に結集して飲みたいもんです。


と短いながらも楽しい時間を過ごし、帰りの電車に乗った時に大江君から
「幸さん、実は私、いま非常にブルーなんです」
との突然の告白が。

ん!
やはりこうしたコミュニケーションの場で、部下からの悩みの相談というのは定番です。
今でこそ直接の部下じゃないとはいえ、一肌脱がなくてはならぬのは同じこと。
さあ、話せ、大江君!

「実は今朝、ケータイで星占いを見たんですが。。」
・・どうやら私が勝手にイメージしていた人生相談のシーンとは明らかに異なるようです。

しかし、大江君の話を聞き、見せられた画面を見て、私も納得しました。

全体、恋愛、仕事、健康、金。
全項目に対し、全て最高の運を示す5ポイントが降り注いでいます。

仕事に追われてラストオーダー間際に居酒屋に到着し、女性もいない席で焼酎だの唐揚だの焼鳥だの体に悪そうなものを詰め込んで、三陸の倍はするであろう金額を支払って最終電車で帰るその日が、彼の運の最高な状態であったのだと、左の画面は語っているのです。

壊れたスロットマシーンのような画面に、正直笑いを禁じ得ず、彼の悲運をひとしきり笑った後でようやく、彼が自分と同じてんびん座であることに気付きました。
今日が自分の運の最高の状態だったのですね。