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2010.4.4
レコード・コレクターズ


ミュージックマガジン社の老舗音楽誌「レコード・コレクターズ」。
当アワーで過去に同誌を取り上げたのは、連載されている漫画「レコスケくん」でした。

「レコスケくん」はストーリーから登場人物のキャラクター設定に至るまで、ほぼ異常とも思えるマニアックさが全体を貫いているのですが、一見全くそれを感じさせない本秀康さんの絵との間で両者が絶妙に中和されている、という希有な漫画です。
たまに禁断症状のようなものを感じて読むのですが、3〜4話で満腹感と疲労感が同時に沸き上がって来るので、変に時間を浪費しないという点でも優秀です。

ちなみに私はこれを書きながらまたレコスケくんを読み始めてしまっているのですが、いま読んだ某回の登場人物は、「超ビートルズ・コレクター」という設定のハザマケンジさん。(これも名曲「Eleanor Rigby」に登場する神父・Father McKenzieさんに由来しているものと思われます)

ハザマさんは登場するなり「家内のテルヨです」と奥様を紹介した後、出し抜けにこう言います。
「結局ジョージって、パティとかオリヴィアなんて名前の人としか結婚してないでしょ。
だから代わりにワシがテルヨと一緒になったのですよ。」
−これはジョージハリスンさんの1966年の曲「I want to tell you」が「アイ・ウォント・トゥ・テルヨ」と読めることを前提とした台詞だと後に分かるのですが、ネタを解説してくれなければ漫画として全く成立しないマニアックさです。

で、そのレコード・コレクターズですが、2日、以下のようなニュースが。
4月15日発売の5月号から活字を現在より約10%大きくすることが2日、分かった。
「字が細かくて読みにくい」との読者からの要望に応えたという。
ここ数年、アンケートはがきを送る熱心な読者の殆どが50代半ば以上で、「字が小さくて読みにくいので大きくしてほしい」という要望が編集部に多数寄せられたことが要因となったとのこと。

うーん。これは「ロック」という、ある意味「若さ故の攻撃性」が前提となっている音楽にまつわる話題としては、実に微妙な話題。
痛い話題、と感じる方もいらっしゃいましょうが、ここで素晴らしいのは同誌編集長の状況分析です。
「ロック音楽が真に革新的で多くの人をひきつけたのは80年代半ばまでで、そのころにファンだった若者がロック音楽とともに年を重ねている。」
単なる読者の高齢化という話題を、80年代後半以降のロックの堕落というワイドな視点と絡めて(すり替えて)語る積極性!
やはりロックを分析して語らせるなら、ミュージック・マガジン系です。

そのうち私が50代になったら、当アワーのフォントもさりげなく10%大となっていますので、引き続きよろしくご愛読下さい。




2010.4.11
井上ひさしさん


長女・桜は3年1組となり、長男・伶は幼稚園のあお組になりました。
自分は昨年異動したばかりなので、特段の動きはありません。

しかし、周囲で異動対象の方々が引越に追われているのを見ていると、何となく自分も次の引越に備えて色々と片づけなければという全く無意味な衝動に駆られ、この土日は桜・伶と共に、整理整頓及び不要なモノの廃棄等に没頭しました。
桜・伶にしてみれば、なぜ父親も自分たちと一緒に新年度対応に全力を注いでいるのか、大変不思議であったことでしょう。

結果的には、大変盛り上がりました。
昔の本を読んだり、レコードを聴いてしまったりと、「無駄」が占める割合も非常に高いのですが、今回の場合は「(いつか来る)引越に備えた」のであって「引越」では全くないため、 寄道し放題です。

そんな作業の中で、井上ひさしさんの「吉里吉里人」もしばし読み直したりしていたのですが、亡くなってしまいましたね・・・。
井上ひさしさんの舞台そのものは、残念ながらそれほど多く観ていないのですが、脚本の力にそれはもう圧倒されたものです。

偉大過ぎる足跡に敬意を表し、ご冥福をお祈り致します。




2010.4.20
楽器の魅力


銀座の山野楽器で六角レンチを購入しました。
何に使うかと言いますと、私の電気ギターの1本、ストラト君の弦の高さを調整するためです(左図)。

何の変哲もないフツーの六角レンチで、ホームセンターなんかでフツーに売ってるのですが、なかなか行く機会もないため、諦めて楽器屋で購入することにしました。

この種の「周辺アクセサリー類」というのは、それが仮に秋葉原のジャンク屋で10円で売られているようなものでも、電気屋や楽器屋で扱われた途端に800円になったりと、全く人でなしの悪徳商法も未だに横行していたりするわけですが、今回の六角レンチはそういう点ではある意味予想外の150円。

見慣れぬ架台に羽目られて実は内心カッコイイ気がしますし、帰宅後も弦高を無駄に上げたり下げたりと繰り返しており、この高揚感と150円というお値段のいわゆる費用対効果は極めて大きいと言えましょう。

ところで私が山野楽器に行ったのはちょうど昼休み。
さすがに平日の昼の楽器屋には学生やサラリーマンっぽい方の姿はあまり見当たらないのですが、代わりにウクレレを吟味するご年輩の姿が非常に多く、 なるほどこれが昨今のウクレレブームを支える層か!と認識しました。
私が楽器のスペースにいたのはせいぜい10分ですが、少なくとも3人のご老人がウクレレを試奏しています。

モノの本によれば、日本でハワイアンが流行したのは1940年代で、映画「憧れのハワイ航路」が1950年。
右ポスターの年齢不詳のヤングを仮に20歳としても現在80歳ですから、あの山野楽器の3人も推定80歳。
となれば就寝時刻もまた相当早いでしょうから、なるほど、これまで自分が通常立ち寄る時間帯=夜の楽器屋で出くわすことが無かったはずです。

しかも、大いなる失礼を承知で現象面だけを正確に述べれば、爪弾いているのか右手が震えているのか区別がつかないような超高齢な方もいらっしゃいましたから、この高齢化時代にあっては大きなマーケット層になっていることは間違いありません。
ウクレレの知識を持つ方など楽器屋にすら少ない時代もあったと思いますが、横で聞いている限りそれなりの知識を持った店員が3人、マンツーマンで3人のご老人に対応していました。

それにしても、何というか微笑ましい光景でした。
その年齢で楽器を買うことに照れているようにも見えますし、とても嬉しそうにも見えます。勿論全てこちらの勝手な思い込みとは分かっているのですが。

ご高齢のお父さんがいらっしゃる方なら、父の日のプレゼントはウクレレですね。




2010.4.29
とどめの一撃


結成以来45年。日本にも根強いファンがいるスコーピオンズだが、先ごろ、活動終了を発表した。
産経新聞のケータイ・ニュースサイトに、突然このような記事が。
さすがフジサンケイグループ。ニュースサイトの「エンターテイメント側の裾野」が実に広いですね。

スコーピオンズとは、ドイツのハードロックというか、ヘビーメタル系のバンドです。
私の高校時代=80年代前半というのは、地球の音楽史においてはヘビーメタルが生まれた頃となりますが、私もこのスコーピオンズやマイケル・シェンカー・グループなどを、友達の池内君に借りて聞いておりました。

勿論、練習も相当やりました。
「ブルースやジャズを弾いています。」などと、問われれば自分の好みを渋く取り繕おうとする私ですが、ヘビーメタルを弾かせたらこれが今でも結構イケるのです。
ただ、あのファッションを身に纏いたいと思ったことだけは誓ってございません。


さて、私の無益なカミングアウトはともかくとして、スコーピオンズ。
好き嫌いは別にして、聞く側も弾く側も共に疲れる大音量のヘビーメタルというジャンルを45年やり続けたというのですから、文字通りお疲れ様と思いながら記事を読み進めます。
華があるうちに有終の美を飾りたいという死生観も日本的で泣かせるが、そんな彼らの最終作「蠍(さそり)団とどめの一撃」はバンドの最後に恥じない素晴らしい内容だ。
ドイツのバンド相手に日本的な死生観をあてがうのも如何かと思いますが、ここで注目せざるを得ないのは、やはりアルバムタイトルの邦題−
「蠍団 とどめの一撃」。

何故かヘビーメタルというジャンルにおいては、原題とはまるで無関係の邦題が付けられることが非常に多く、「これ、本人達は知ってるんだろうか・・・」と人ゴトながら心配になることもしばしばです。
そういう点では今回も派手にやってくれたと言えましょう。

原題は「Sting in the Tail」。
バンド名がスコーピオン=蠍ですから「とげがある」という意味で付けたのか、もしくはラストアルバムなので皮肉っぽく「後味の悪さ」という意味で付けたのか、詳しくは分かりませんが、 間違いないのは「蠍団とどめの一撃」という意味では確実に無いこと。
「とどめの一撃」と解釈する事まではまだ理解可能として、なぜそこに「蠍団」というカッコ悪い組織名を付するのかが分かりませんね。
まさにとどめの一撃です。

ちなみに高校時代に聞いた、上述のマイケル・シェンカー・グループの1stアルバムのタイトルは「神」。
「God」というタイトルなのかな?と思って確認したら、原題は単なる「Michael Schenker Group」で、それはもうビックリしたもんです。


あれから約30年。この文章を書いているうちに、当時のヘビメタ類が異様に恋しくなりました。
次回のライブ・ハシモトコウアワー、幕が開くなり私が黒のレザーの上下にスタッド付きブレスレッドをはめて火を噴きながら出てきても、どうか温かく見守って下さい。