Jazz / Introduction
11PM
 ねずみ算さんからの手紙と「引退した無名の音楽家」さんからの譜面
 
Jazz / 11PM

「11PM」は深夜枠ワイドショーの先駆けで、手元の資料によりますと、放送開始は1965年11月。
昭和40年ですから、やはりこの番組の歴史的価値は極めて高いと断言できましょう。
私の少年期、「11PM」は既にエッチな番組の代名詞でした。

しかし私はここで 「11PM」の魅力的な番組内容に関し、何ひとつ語れるようなものを持ち合わせていないことを告白しなければなりません。
この革新的お色気番組を早熟にも幼少時より日々視聴し、そこで得た知識を翌日クラスの男子を集め熱く語る・・・
本来そうした絵に描いたような大人の体験をお持ちの皆さんこそ、この11PMを「俺の番組」として雄弁に語る資格があるというもの。

しかし残念ながら満足なテレビジョンさえ配備されていなかった私の家では、この番組は決して覗くことのできない秘密の世界・・・。
私の脳内では、噂の「11PM」という番組が一体どんなことになっているのかという想像だけが竜のように暴れ回っていたのですが、 中学に入ってテレビジョンが家庭に導入されるようになってからも、茶の間内にこうした番組を楽しむ気運は決して盛り上がることなく、結局大学入学後に1人暮らしをするようになって初めて、この番組を何不自由なく見る環境が整ったのです。
その頃には「11PM」の話題で興奮している人間は既に絶滅していました。




Openning 

テーマです。さあ聴いてみましょう。高速の4ビート!これはキますよ!

ゴージャスに仕立てようという意図は明確にうかがえるのですが、「シャバダバシャバダバ」という男女コーラスがむしろ低俗感を強力に増幅させています。
オープニングの、女性の輪郭の映像(ところどころ星になってる)が目に浮かびますね。

職場のパソコンでイヤホンなどでこっそり聴く場合も、油断しているとついうっかり「シャバダバシャバダバ」と口に出てしまいますので、気が緩まないよう細心の注意を払いましょう。

*

さてせっかくこの名曲を【2チャンネル・ジャズ】のコーナーで取り上げているのですから、ちょっと「如何にも JAZZ」という聴き方をしてみましょう。勿論「如何にもJAZZ」と言っても、何しろここはハシモト コウ・アワーですから、せいぜい「良く聴いてみましょう」と言っている程度なのだな、と思って いただければ結構です。

この『11PMのテーマ』は、ギター、ピアノ、ベース、ドラムのコンボ編成で演奏されています。 このうちギターは殆どスキャットの前半部分のメロディをユニゾンで弾いているだけですので、事実上、 ピアノ、ベース、ドラムの3人+コーラスで構成されています。 (ただしこのユニゾンのギターも、ケニー・バレルでも連れてきたのかというようなナチュラルな シングルトーンで全く聞き逃せません。)

曲はブルースです。このふざけた曲のどこがブルースだ!とお怒りの淡谷のりこファンの姿が目に浮かびますが、 コード進行及び構成がブルースということですので、どうか許して下さい。
また低品質なカセットデッキで録音したためか回転数に難があり、キーもEなのかFなのか良くわかりません。 まあジャズのコーナーですので、ここは一般的な『Fのブルース』としておきましょう。


[1 前半]
F7F7F7F7
シャバ,シャバダバシャバダバ ヴィー シャバダバドゥーワッ
B♭7B♭7F7F7F7F7
ドゥッ,ドゥッドゥッドゥシャバダバ シャバ シャバダバダバダバ ヴィー シャバダバドゥーワッ

ストレートに構成するなら、トニック(F7)→サブドミナント(B♭7)→トニック(F7)という8小節の後、 そのままサビに行って良いところですが、そこに2小節のアクセントを加えており(太字スキャット部)、これが結構効いています。
サビ直前の10小節目「ドゥーワ」ではバスドラムもユニゾンで参加し、メリハリも効いていますね。


[2 後半]
G#F#
シャバダバ,シャバダバシャバダバ,シャバダバシャバダバ,シャバダバ
A#
G#
〃 G/F#
シャバダバダ ヴィー   シャバダバシャバダバダ ヴィー   シャバダバドゥーワー

お馴染みのサビ。かつてCanチューハイのCMで使用された時に藤原紀香がセリ上がってきた部分です。
コードはルートのみ記載しています。

このように半音の動きでコードが上下する場合の1つの弾き方として、『パッシング・ディミニッシュ』(通過型ディミニッシュといった意味) と呼ばれるディミニッシュ・コードの活用があります。 独特の「分かったような分からないような」効果 も出て「う〜ん、ジャズかも??」という感覚がそれなりに味わえますのでやってみましょう。

フォームは一般的な1〜4弦を使うタイプではなく、6弦ルートを中指で押さえ、5、3弦をそれぞれ人差指、薬指で押さえる形です。 このフォームを平行移動させ、最初から最後までこの形で弾いてしまうのです。これならギターの苦手な方でも弾けそうですね。

  ・ディミニッシュ・コードのフォーム(Adimの場合)
   

わかりやすく、コードを「押さえる位置」で表記してみましょう(数字は6弦中指の位置)。

シャバダバ,シャバダバシャバダバ,シャバダバシャバダバ,シャバダバ
6 
4 
〃   3 2
シャバダバダ ヴィー   シャバダバシャバダバダ ヴィー   シャバダバドゥーワー

1行目は中指を5→4→3→2fと下降、2行目は7→2fと下降し、キメの『Do Wa−!』は1→7fです。

さあさっそくギターを取り出し練習です!
弾けるようになったらお子さんに聞かせてあげましょう。 お子さんが「ナマ紀香だ、ナマ紀香だ!」と言って喜ぶ姿が目に浮かびますね。

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Closing 

番組の終わり=クロージングのテーマです。
しかし、いくら曲を終わらせたいからと言っても、突然「ルールールールー」で終わらせるとはなかなか強引ですね。
「取って付けたような」という表現しか思い浮かばないほど唐突ですが、その秘密をちょっと探ってみましょう。

まず気になるのが曲の前半部で、良く聞くとオープニングとクロージングでは殆どサウンドに差がないように思えます。
昨今世の中で流れている音楽を考えてみますと、歌謡曲からアニメ主題歌まで、およそ全てを コンピュータ制御によって機械が演奏しており、例えば1番と2番が寸分違わず同じ音だとしても、 全く珍しいことはありません。

しかしこの11PMの時代となると話は別で、レコードやテレビでの伴奏等は、全てバンドやオーケストラによる実際の人力演奏です。
とすると、均質な演奏ができるよう余程訓練されていたとしても、この11PMのオープニングとクロージングの同一さはちょっと奇異ですね。

そこで再度クロージングをものすごーく注意深く聞いてみますと、 前半部はオープニングと全く同じテープを使用した上で、最後の「Ru-Ru-Ru-Ru-」だけを強引に繋げていることが分かります。
繋ぎ目を自然に仕上げるため、直前の「Wee!」の部分を使って2本のテープをラップさせているようです。

人間の耳は、敏感とバカの中間で、あからさまな違いはすぐ気付くのですが、ちょっとした細工をされると何も気付かないもの。
一瞬のオーバーラップ部を設けて2つの音を繋ぐというのは 音響の制作の世界ではとても良く用いる(用いた)アナログ的かつ非常に有効な手法です。


 ■テープ@:〜Shabadaba×4 ShabadabadaWee! (ShabadabaShabadabada Wee!Shabadaba Doo Wah!)
 ■テープA: Wee! Shabadaba Ru-Ru-Ru-Ru-


こうして私達は、緑字で示したとおり、いつの間にか隣の道を走ってゴールしていたのですね。
「取って付けたような」エンディングは、実際、取って付けたものだったというわけです。

というわけで、魅惑の11PMの世界。
実験的で刺激的な番組にふさわしいサウンドは、いまも私達の心を捉えて離しません。

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