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Take The A Train

Liveハシモトコウアワーの会場=劇場コンカリーニョの場所はJR琴似駅横。
2010年頃から、ライブの冒頭で「琴似行きの列車で行こう」という意味を込めて「Take The K Train」を演奏していますが、ご存知の通り元歌はジャズの名曲「Take The A Train」です。


1983年にThe Rolling Stonesの全米ツアー「Let's Spend the Night Together」が映画になりました。 私が浪人している時の話。
当時の私は札幌駅北口にできたばかりの代々木ゼミナールに入校し、勉学に励んでおりました。

ちなみに当時の代ゼミは新築で綺麗だったため、他の予備校に比べて女子大・短大志望の女子の割合が非常に高く、男子学生は勉強に対するコンセントレーションを維持することが非常に困難という危険な予備校。
本来ストイックであるはずの浪人生が次々と「学」よりも「愛」を選択し、何人もの同志がコースアウトしていったのです。

札幌には狸小路という味わい深い名前の商店街があり、この映画「Let's Spend the Night Together」は確かその2(か1)丁目の映画館で上映されました。
私は良心の痛みを感じつつも授業をサボって朝1番の上映を見に行ったのですが、客の入れ替えが無かったため結局最終上映まで1日中をそこで過ごししまい、興奮状態で帰宅したのです。

恐らく映画の善し悪しよりも、動くThe Rolling Stonesを見たことが、浪人中でなるべくギターを弾かないで我慢していた私の心を激しく揺さぶったと思われます。
勉強に100%集中しようと決めていた私の心をあっという間にむしばんでしまったのですから、全くロックというのは恐ろしい音楽です。
決して浪人生にロックを聴かせてはいけません。


この映画のオープニングは開演直前の彼らのバックステージの様子。 開場は野外スタジアムで、青空に風船も飛んでいます。観客の歓声も聞こえます。
そのシーンのバックで流れていたのがTake the A Trainのピアノ。時間にすればわずか45秒で歓声に紛れて聞き取りにくいのですが、このピアノが観ていた私の気分をものすごい高さまで高揚させてくれたのです。

原曲を聴くとピアノのフレーズの洒落ていることと言ったらこの上ありません。
そして一瞬のホーンを挟んで、これまた頼むから勘弁してくれと言いたくなる魅惑のボーカルへと続くのです。

*

次にこの曲に出くわしたのは大学時代、1920年代のハーレムのドキュメントに亡くなったキャブ・キャロウェイさんの自伝を重ねたような映画「Minnie the Moocher」がビデオで復刻され、 例によって大した知識もないまま油断して見たのですが、これがヤられました。
全編、キャブ・キャロウェイさんのハーレムと音楽に対する愛情に満ち溢れ、どこをとっても良いのですが、何と言っても映画の冒頭、何の前触れもなくいきなり立ち上がってくるTake the A Trainの最初のフレーズ「You〜」の低い声。
セピア色の画面、地下鉄のセットをバックに歌うのはデルタ・リズム・ボーイズ!
歌は完璧、楽しそう。もうカッコいいなんてもんじゃありません。


A列車はニューヨークの黒人街ハーレムへ向かう地下鉄。そこは言うまでもなく、音楽の街です。
  ♪A列車に乗らなきゃね ハーレムのお祭りに行くのなら
素敵過ぎる歌詞に感化され、「琴似行の列車に乗らなきゃね コンカリーニョのお祭りに行くのなら」と今も毎年歌っているのです。