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Bluegrass駅伝的アルバムレビュー「Bluegrass Times」
 
駅伝的アルバムレビュー「BluegrassTimes」 / 金一健 -mandolin-

Banjoman / The Original Soundtrack(1973.1 live recording)
A1. Lonesome Ruben : a
A2. Battle of New Orleans : b
A3. You Ain't Goin' Nowhere : c
A4. Freight Train Boogie : d
A5. T for Texas : a
A6. Roll Over Beethoven : e
B1. Me and Bobby McGee : f
B2. Mr. Tambourine Man : e
B3. Black Mountain Rag : d
B4. The Night They Drove Old Dixie Down : c
B5. Diggy Liggy Lo : b
B6. Blowin' in the Wind : c
B7. Foggy Mountain Breakdown : a
B8. Billy Fehr : f
The Earl Scruggs Revew : a
The Nitty Gritty Dirt Band : b
Joan Baez : c
Doc & Merle Watson : d
The Byrds : e
Ramblin' Jack Elliott : f
Label/No etc. 日本フォノグラム RJ-7289(廃盤)、オリジナル盤の番号不明
お買い求め情報 CD化されたという話は聞いたことがない。
もしご存知の方がおられましたらご一報を!
備 考 もし聴きたい方がおられましたらご連絡を。なんとかします。

Banjoman / The Original Soundtrack

まず、なぜ記念すべき最初の回にこのレコードを取り上げるのかについて説明しなければなりますまい。本 来ならこのレコードより先に取り上げるべき名盤は山のようにあるはずです。しかもこのレコードにはブルーグラスバンドはひとつも登場しません。だのになぜ歯をくい しばり君は行くのかそんなにしてまで。じつはこれは私が紅顔の美少年であり、もちろん肌もつるつるだった頃、走れコウタロー以外で初めて買ったブルーグラス系のレ コードなのです。

小学校高学年くらいからサイモン&ガーファンクルにはまっていたシブい趣味の私は中学・高校時代、ポールサイモン奏法のコピーを日課とす る真面目な美しい少年でした。テキストはもちろん知る人ぞ知る大塚康一先生の著による一連の書物です。その大塚先生はフォーク専門誌「ヤングギター」に講座を持っ ており毎月アコースティックギターの達人を紹介しておりました。そこで取り上げられていたのがドクワトソンだったのです。向学心に燃える当時の私のことですから、 さっそく挑戦した事は言うまでもありません。しかし残念ながら曲を聞いたことがないのでTABを頼りにブラックマウンテンラグの最初の部分をやってみて「ふ〜む、よ くわからん」なんて思っていたりして・・・。
そんな絵に描いたような美しい少年時代を過ごしていた高校1年の冬、店で偶然このレコードを見つけたのです。「おっ!あのドクワトソンとやらが入って る!しかもブラックマウンテンラグとかいうあの謎の曲じゃないか!う〜ん、ホンマモンはどんな感じなのか聴いてみたい!」そして購入。初めて聴いたときはあまりの カッコ良さに異常に興奮しました。アドレナリン噴出!おおお〜こんなに速い曲だったのか!エレキで早弾きってのは当たり前だと思っていましたが、生ギターの単音早 弾きを初めて聴いた私は興奮のあまりその場で石川鷹彦と正やんに別れを告げたのです。ドクを心底カッコイイと思いました。一見冴えない普通のおっさんなのにスゴ過 ぎる。まさに「脱いだら凄いんです」。

そんなかっこいいドクに心を奪われながらも、やはり純粋で美しい少年の耳に飛び込んでくるのは楽しげなバンジョーの 音色です。そう、このレコードの主役、アールスクラッグス率いるスクラッグスレビュー。ブルーグラスバンジョーの神・アールスクラッグスがフラット&スクラッグス 解散後に息子達と組んだバンドです。このバンドは一応カントリーロックの範疇に入るのでしょうか。同じカントリーロックでもこのレコードにも出てくるニッティグリ ッティダートバンドやバーズなんかと比べると洗練度は著しく低いです。でもその泥臭さやちょっとドタバタした感じがえも言われぬ味を放出していて、はまると離れら れなくなります。
ここで注目すべきはやはりスクラッグスです。と言ってもこれはスクラッグス親子のバンドですからスクラッグスは3人も居ます。どのスクラッグ スに注目すればよいのでしょうか?言うまでもありません、お父さんであるアールですね。やはりアールスクラッグスの音は良いですね。バックがどう変わっても彼はい つも変わりません。ここにはフラット&スクラッグス時代からの仲間であるジョッシュも参加していますが、彼のプレイも基本的にF&S時代と同じです。しかしこの2人の おじさんが、若者に触発されたのか妙に元気いっぱいで熱気を帯びています。後期のF&Sとはなんとなく違います。音がイキイキしています。そしてやはりこの人達はお 客さんを前にすると違うなあ。たぶん人前だとハッスルしてしまうのでしょう。
そしてランディスクラッグス。アールの息子です。スクラッグスレビューのもう一つの楽しみはランディのほんのちょっとカッコ悪いギターにあると思うのですが、やは り彼はここでもツボを外しません。でもそんなところがなんか憎めないんだなあ。こっちがちょっぴり気恥ずかしくなるような、そんなステキなプレイなのです。でも出 来れば影響されないほうが良いと思わないこともないです。

そして最近はやりのバーズ。ここに入っているのはクラレンスホワイト参加の後期バーズですが、何 と言っても聞き所は当たり前ですがやっぱりクラレンスでしょう。後期バーズについては後々越澤くんが取り上げるそうなのでそれを楽しみにするとして、私はちょっと だけ。
ロールオーバーベートーベンでのロジャーマッギンのこのトテトテのリードギターはひどいですね〜。この気違いじみたボーカルもひどい。でもこのひどいロ ジャーマッギンに邪魔されながらもかすかに聞こえるクラレンスのバッキングを聞き逃さないで下さい。いつものように異常にカッコいいです。クラレンスのエレキは本 当に凄い。もし興味があったら「ナッシュビルウェスト」というアルバムを聞いてみて下さい。興奮間違いなし!
バーズのもう1曲、ディランの「ミスタータンブリ ンマン」はロジャーとクラレンス2人だけの編成で、ここでは生ギターによる極限まで美しいロマンチックなクラレンスがあなたを天国にいざないます。

あとはニッティグリッティダートバンド、ランブリンジャックエリオット、ジョーンバエズが収録されていますが、ジョーンバエズ以外はどれも素晴らしい。いやジョーンバエ ズも悪くないのですが浮いている。NGDBについては越澤くんが取り上げるそうなのでそちらも要注目です。


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A Voice from on High / Bill Monroe(1950〜55)
A1. LET THE LIGHT SHINE DOWN ON ME
A2. LORD PROTECT MY SOUL
A3. WAIT A LITTLE LONGER, PLEASE JESUS
A4. A VOICE FROM ON HIGH
A5. I'M WORKING ON A BUILDING
A6. DON'T PUT OFF 'TIL TOMORROW
B1. HE WILL SET YOUR FIELDS AFIRE
B2. GET DOWN ON YOUR KNEES AND PRAY
B3. BOAT OF LOVE
B4. WALKING IN JERUSALEM JUST LIKE JOHN
B5. RIVER OF DEATH
Bill Monroe : mandolin
Jimmy Martin, Carter Stanley 他 : guitar
Sonny Osborne : banjo
Charlie Cline : fiddle
Ernie Newton 他 : bass
上記&その他多くのメンバー : vocal
Label/No etc. MCA-131(DECCA DL7-5135)
お買い 求め情報 未CD化
備 考 ベアファミリーの全集で全曲聴けるはずです。

A VOICE FROM ON HIGH / BILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYS

しかしこれほどの名盤がなぜCD化されないのか、非常に疑問を感じます。ビルモンロ ーは未CD化があまりにも多いですね。ベアファミリーの全集がそれに拍車をかけてい るのでしょうか。でも全集だけじゃやっぱりダメなんです。一枚の収録時間が長すぎ るし、レコーディング順に並んでいるだけではこの雰囲気は味わえませんから。全集 だけをお持ちの方は上記の順番で曲を並べたテープを作って聞いてみて下さい。独特 の世界が広がることでしょう。ジャケットのビルの表情そのままの厳しい音。この顔 は50年代のビルモンローの音楽そのものです。ニコリともしません。

このアルバムはセイクレッド集で、ほとんどの曲が四部コーラスで歌われています。 楽器もギター、マンドリン、ベースだけを使い、バンジョーやフィドルはほぼ出てき ません。ですからビルのマンドリンがたっぷり聴けるという点でも素晴らしいアルバ ムなのです。そしてまたホントに凄いのです、このマンドリンが!50年代のビルは何 度聴いてもやっぱりスゴイ。よく「火花の散るようなプレイ」などと形容されますが 、ここでは更に「燃え上がった火に油を注ぐようなプレイ」または「千葉すずの発言 のようなプレイ」と言っておきましょう。ビルも水泳連盟のジジイ達にイジメられな ければ良いのですが・・・。また、ビルの特徴である「都会的洗練」。なにが「都会 的」なのかは置いといて、とにかく「洗練」です。オシャレなんです。例えばフラッ ト&スクラッグスと比較すると解りやすいと思うのですが、F&Sはバンドとしての一 体感とか演奏能力などは相当に高く、全員でグイグイ盛り上がってくる感じはブルー グラスボーイズの比ではありません。レスターの歌の上手さとギターの的確さ、スク ラッグスのバンジョーのトーン、ターロックのベースのノリノリ具合、どれをとって もやはりブルーグラスボーイズより上だと感じます。ただ、センスが田舎っぽいです よね、それが「売り」だったのだとは思いますが。そこへいくとブルーグラスボーイ ズには不思議と田舎っぽさがありません。ギターもバンジョーもベースもその時のメ ンバーによってはショボいと感じられることも多いですが(ですがフィドルだけは常 に超一流の人材を擁している)、そんなときでもビルは自身のカット一発で頼りなげ なメンバーを鼓舞し、バンドを前へ前へと引っ張ります。ちょっと真似できない素晴 らしいリズムプレイなのです。私もまだ良く解りませんがブルーグラスの秘密はここ に隠されているような気がします。

それでは曲を個別に見ていきましょう。レコードに針を落とすとA1でもういきなり炸裂しています。いくらなんでも早すぎる・・・。ペース配 分はどうなるのか!脳裏を不安がよぎりますがどうぞご安心下さい、これはスタート ダッシュだったのです。まずは首位に立ったところで次のA2でグッとペースダウン。 力を蓄えているのがわかります。そしてA3に入ると流れてくるのはどこか懐かしいよ うな寂しげなメロディ。一瞬ホロリと気が緩んだところであまりと言えばあまりに美 しいA4の調べが・・・。この美しさは何なんでしょう。私はなんとなく「自分に厳し く、他人には優しく」という言葉を思い出してしまうのでした。そんな言葉を噛みし め、涙ぐみながらもA5ではちょっと風に乗ってスインギーに走ります。続いてA面最 後のA6。フィドルとバンジョーが聞こえてきました。これは当時14歳のソニーオズボ ーン少年。彼のバンジョーは後年粘りに粘る事になるのですが、この時すでに充分の 粘り気が感じられます。少年ですからあまり良い楽器を持っていなかったのでしょう 、音質はベンベンしていてお世辞にも美しいとは言えません。ああ、この時の彼がグ ラナダを所持していたならなあ!

さあ後半、B面です。気を引き締めて行きましょう。と思うや否や、おっとB1でいき なりのトップスピード!速い速い!いや〜危ないところでした、気を引き締めていて 本当に良かった。うっかりしていたら見失っていた事でしょう。それにしても激しす ぎる緩急の差。こちらの油断を衝いてくる見事な戦法です。ここで後続を大きく引き 離したと見るやB2は余裕の陽動作戦。極限まで暗い世界で身も心もボロボロになりそ うです。このギターは若き日のカータースタンレー、半年だけブルーグラスボーイズ に参加したそうです。続くB3ではジミーマーチンのリードボーカルが楽しめます。ブ ルーグラスボーイズ時代の彼は後に明らかになるお調子者ぶりを一切見せず、ビルの 忠実なしもべとして振る舞っています。このアルバムでも実にA1.A3.B2.以外は全て ジミーが参加しており、まじめな顔で神妙に歌っています。いや、見たわけではあり ませんが少なくとも声はそんな感じです。とにかく50年代前半のブルーグラスボーイ ズを支えたギタリストはジミーマーチンだったわけで、彼はこの時期ビルから多くの ものを学んで後に自身の音楽に活かしたのでしょう。そしてたぶん彼はこの暗さに嫌 気がさして、自分では脳天気とも思える陽気な音楽を発表し続けたのでしょう。私は そんなジミーマーチンが大好きです。
話は横にそれてしまいましたが、気づけば曲はB4に入っています。沿道のファンに励 まされたのか徐々にペースが上がっているようです。依然後続は大きく遅れているの で余裕の独走態勢です。さあ、いよいよスタジアムへ入って行きます。大きな歓声が ブルーグラスボーイズを包みます。そこでラストB5。おお、これは静かにレースを締 めくくろうとする憎い演出でしょうか。再びジミーにリードボーカルを任せ、ビルは 余裕でスタンドに手を振っています。

とここまで一気にアルバムを聴いてきたわけですが、図らずもマラソンレースの実況 のようになってしまいました。余裕を持ったレース展開、しかし意表を突いた攻め。 これはまさしく横綱アルバムと言えるでしょう。「マラソンは人生のようだ」「バレ ーボールは思いやりのスポーツ」「立て、立つんだジョー」などスポーツに関する名 言・金言は数え切れないほどあります。その例を音楽に当てはめるならば「名盤は人 生のようだ」「ブルーグラスは思いやりの音楽」「聴け、聴くんだ名盤」と言って間 違いないでしょう。そして最初に戻るようですが、これほどの名盤がCD化されないと は!私にはどうしても納得できないのです。

最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。無意味に長くなってしまって すみませんでした。


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The New Nashville Cats / Mark O'Connor (1991)
1. BOWTIE
2. RESTLESS
3. NASHVILLE SHUFFLE BOOGIE
4. PICK IT APART
5. TRAVELLER'S RIDGE
6. GRANNY WHITE SPECIAL
7. CAT IN THE BAG
8. THE BALLAD OF SALLY ANNE
9. SWANG
10. DANCE OF THE OL' SWAMP RAT
11. A BOWL OF BULA
12. LIMEROCK
13. SWEET SUZANNE
14. ORANGE BLOSSOM SPECIAL
15. NOW IT BELONGS TO YOU
Mark O'Connor : fiddle
Brent Mason, Russ Barenberg : guitar
Bela Fleck, Mark Schatz : banjo
Jerry Douglas, Paul Franklin : slide
Mark Schatz, Roy Huskey : bass
上記&その他多くのメンバー : vocal
Label/No etc. Warner Bros. / 9 26509-2
お買い 求め情報 現在でも問題なく買えるはず
備 考 特になし

The New Nashville Cats / Mark O'Connor

かなりスゴイです!
マークオコーナーのこのアルバムは、人力演奏のひとつの究極の姿を見せてくれます 。ナッシュビルのミュージシャンといえば当たり前のように有能なのですが、それが どれほどまでに有能なのかをこれでもかとばかりに見せつける、これはそんなカタロ グ的な意味も多分にあるアルバムだと思います。

ナッシュビルと聞くとなんとなくそこにいるミュージシャンはカントリー音楽ばっか り演奏しているような錯覚を起こしてしまいがちですが、じつは全くそんなことは無 いそうです。私はその事をつい昨年知ったのですが、考えてみればボブディランの大 傑作「ブロンドオンブロンド」などもナッシュビルでレコーディングされているので す。つまり全米(あるいは全世界)からレコーディングに訪れるあらゆるジャンルの 歌手のバックを付けなければならないのがナッシュビルの有能なセッションマンなの です。しかも素人の伴奏をする訳ではなくディランのようにのちに名盤となるような 超重要なアルバムのセッションです。単なるお仕事では済ませられない真剣勝負なの です。
そんな中からあらゆるスタイルを吸収していった90年代の若手セッションマン達。彼 らの素晴らしさを思いきり堪能できるアルバムがこの「ニューナッシュビルキャッツ 」です。
彼らの演奏能力の高さはホントに驚異的で、速い曲ではまるで打ち込みのように縦の 線がビシッと揃い、スローな曲では思い入れたっぷりに泣かせる。カントリーはもち ろんジャズでもロックでも、まさになんでも来いです。私には「ジャズもロックも関 係ねえ!」と叫んだという長渕剛氏の気持ちが痛いほどわかります。私も初めてこの アルバムを聴き終わったときは思わず「ジャズもロックも関係ねえ!」と叫んでギタ ーをかき鳴らしてしまったことは言うまでもありません。

さて何曲か個別に聴いてみましょう。
1曲目「BOWTIE」はマークオコーナーがホストをつとめていた「アメリカンミュージ ックショップ」というTV番組のテーマ曲です。さあ始まるよ〜!といった感じで早く もワクワクしてきます。この番組がまた凄い番組でした。毎週ゲストが登場して歌う のですが、バックバンドはマークはじめこのCDにも登場しているメンバー。そしてや はり彼らはいつも素晴らしかった。思わずバックバンドにばかり注目してしまったも のです。似たような番組にマーカスミラーやデビッドサンボーンがやっていたのもあ りましたね。番組名は忘れてしまいましたが(サンデーミュージック?)、そちらも 凄かった。普段は物静かなデビッドサンボーンもたぶん「ジャズもロックも関係ねえ!」と思っていたに違いありません。
2曲目「REST LESS」は軽快なカントリー調です。聴きどころはスティーブワリナー&リッキースキ ャッグス&ヴィンスギルによるボーカル&ギターバトルでしょう。ボーカルはもちろ んですが、この三人はみんなギターが上手い!テレキャスターにコンプという典型的 なサウンドによるカントリーギターバトルです。これは爽快!
3曲目「NASHVILLE SHUFFULE BOOGIE」は曲名のとおりシャッフルでブギーです(笑) 。ホーンセクションも入ってみんなノリノリでブルージーにキメています。ブルージ ーな気分の表れなのでしょうか、エレキギターは言うに及ばずフィドルやラップスチ ール(ジェリーダグラス)にもディストーションをかけています。なんてわかりやすい。
4曲目「PICK IT APART」。これは凄い!本領発揮です。特に注目はギターのブレント メイスン、ペダルスチールのポールフランクリンです。このスピード!人間はここま で出来るのでしょうか!前述「アメリカンミュージックショップ」でこの曲を演奏し ている回があるのですが、ブレントメイスンはなんとフラットピックではなくサムピ ック&フィンガーピックでバンジョーのロールのように弾いているのです!こんな人 はじめて見ました。世の中にはいろんな人がいるもんです。
6曲目「GRANNY WHITE SPECIAL」。待ってました!このアルバム唯一のブルーグラス スタイルです。サムブッシュ、ベラフレック、ジェリーダグラス等いつものメンバー ですが、やはりサムの凄さに圧倒されます。珍しくギターがラスバレンバーグなのも 嬉しい点です。ラスはいつでも美しい!
7曲目「CAT IN THE BAG」はマークの原点とも言えるテキサススタイルです。
8曲目「THE BALLAD OF SALLY ANNE」はジョンコーワンのボーカルが楽しめます。暑 苦しいジョンのボーカルもたまに聴くといいもんです。
9曲目「SWANG」はジャジーでスインギー。ここでも驚くべきはブレントメイスンのギ ターです。テレキャスター(改造ものですが)とバンジョーのようにローリングする 右手なのにジャズもバシッとキメています。
12曲目「RIMEROCK」はエドガーメイヤーのベースとのデュオです。最近マークはエド ガーメイヤー&ヨーヨーマと組んでクラシック界での活躍も多くなっていますね。 14曲目「ORANGE BLOSSOM SPECIAL」はお馴染みですね。ですが尋常ではない速さです 。しかしアンサンブルは一糸乱れず、しかも凄い前ノリ。遂にポールウォレンを越え たかもしれません。
そして最後15曲目「NOW IT BELONGS TO YOU」。前曲の興奮を鎮めるかのようにステ ィーブワリナーの心に沁みるボーカルで静かに泣かせて締めくくります。

さあ、あなたもガマンせずに叫びましょう。
「ジャズもロックも関係ねえ!」


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I Can Hear Kentucky Calling Me / The Osborne Brothers (1980)
A1. I CAN HEAR KENTUCKY CALLING ME
A2. KEEP ME FROM BLOWING AWAY
A3. DON'T LET SMOKY MOUNTAIN SMOKE GET IN YOUR EYES
A4. DANDYLION
A5. GEORGEA MULES AND COUNTRY BOYS
A6. TAKE ME HOME COUNTRY ROADS
B1. BOGALUSA
B2. SHELLY'S WINTER LOVE
B3. RIVER'S GOIN' DOWN
B4. SOUVENIRS
B5. BACK TO THE COUNTRY ROADS
SONNY OSBORNE : BANJO
BOBBY OSBORNE : MANDOLIN
PAUL BREWSTER : GUITAR
JIMMY D. BROCK : BASS
BUDDY SPICHER : STRINGS
LEON RHODES : LEAD GUITAR
others : PIANO, DRUMS, DOBRO, etc.
Label/No etc. CMH-6244
お買い求め情報 CD化されていないと思います。
備考

I Can Hear Kentucky Calling Me / The Osborne Brothers

もうずいぶん昔の話ですが・・・。
「金一さんはとても素晴らしい人なんだけど、オズボーンファンだからなあ。悪いけどそこだけが残念な点だよね。」と私は当時まだ学生だった松○くん(彼の名誉のため特に名を秘す)に面と向かって嗤われたのでした。私は当然のこと深く傷つきましたが、しかしオズボーンの素晴らしさを必死に訴えました。「すさんだ彼の心にもいつかきっと爽やかなオズボーンの風が吹くはずだ。今はどうしようもない彼だけどきっと更正してくれる。彼はそんなに悪い子じゃない。きっと悪い友達にそそのかされているんだ。」そのときの私はそんな気持ちでいっぱいでした。
しかし時は流れて・・・。このM本君(彼の名誉のため特に名を秘す)が後にオズボーンマニアとして知られることになろうとは!オズボーンのアルバムを全て集めることになろうとは!オズボーンの完コピバンドを結成することになろうとは!人間どっちに転ぶか本当に解らない。面白いものですね。
皆さん。この勝負、私の大勝利と考えていいですよね?

さて今回取り上げたいのは、私のオズボーン好きを決定づけたアルバムともいえる「 I CAN HEAR KENTUCKY CALLING ME」です。 このアルバムはオズボーンブラザーズのCMH時代を代表する傑作です。DECCA/MCA時代からの様々な試みがひとつの頂点を迎えたといっていい、完成されたオズボーンサウンズです。ここで注意したいのは「サウンド」ではなく「サウンズ」と言っていただきたいのです、ちょっとしたことですが。
オズボーンのDECCA/MCA時代(例えばYESTERDAY, TODAY, AND THE OSBORNE BROTHERS のTODAY SIDE)を聴くと彼らはストレートなブルーグラスではなく独自の音、いや、サウンズを求めて実験を繰り返しているのがよくわかります。それは時に非常に強引だったり、やりすぎてクドかったりして必ずしも全部が成功しているとは言えないかもしれません(ただし、私らオズボーン好きからしてみればその全てがいとおしくカッコイイものではあります)。しかしこのアルバム「I CAN HEAR KENTUCKY CALLING ME」はブルーグラスとしては少々薄味ながら非常にオシャレで洗練されており、誰にでも自信を持ってすすめられる仕上がりになっています。とは言ってもまあ、そこはオズボーン。オシャレと言っても「オズボーンにしては」と言った程度でじつはかなり田舎っぽいですし、もちろんブルーグラスのエッセンスもふんだんに盛り込まれています。

このアルバムの聞き所はやはり絶好調ボビーのボーカル、これまた絶好調ソニーのバンジョー、そして何と言っても全編でそれらに絡みまくる絶好調バディースパイカーの多重録音によるストリングスです。このストリングスこそがこのアルバムをオシャレ路線に特徴づけている最大の要素と言って間違いありません。とにかく美しく、しかもノリノリです。この素晴らしい三人の絶好調男が本気で実力を発揮しているのですから悪いはずがありませんね。
またこのアルバムは本当に良い曲が揃っています。全部良い曲です。なかでもA4「DA NDYLION」。このソニー作によるインストの美しさはどうでしょう。ソニーって、顔に似合わず相当なロマンチストなんですね。美しすぎます。あんな巨大クマヒゲ男なのに。また、途中で出てくるストリングスのピチカートがかなり良い味を出してロマンチック気分を盛り上げます。そういえばストリングス担当のバディースパイカーもクマヒゲ男でした。ふ〜む、こうしてみると世界的にクマヒゲ男はかなりの確率でロマンチストであるという意外な事実が証明されてしまいました。

言いたいことはもっともっとあったのですが、この事実が証明されたことだけで充分なような気もしてきましたし、これ以上恐ろしい事実が明るみに出たとしても対処できないと思うのでこの辺でそそくさと切り上げます。

このアルバムレビューの結論としては「クマヒゲロマンチスト集団、美を追求。」という感じでしょうか。


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