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Bluegrass駅伝的アルバムレビュー「Bluegrass Times」
 
駅伝的アルバムレビュー「BluegrassTimes」 / 松本和茂 -guitar-

Angel Band / Emmylou Harris (1987)
1. Where Could I Go But To The Lord
2. Angel Band
3. If I Be Lifted Up
4. Precious Memories
5. Bright Morning Stars
6. When He Calls
7. We Shall Rise
8. Drifting Too Far
9. Who Will Sing For Me
10. Someday My Ship Will Sail
11. The Other Side Of Life
12. When They Ring Those Golden Bells
Emmylou Harris : Lead Vocals, Guitar
Vince Gill : Vocals, Guitar, Mandolin
Carl Jackson : Vocals, Lead Guitar
Emory Gordy, Jr. : Vocals, Bass
Mike Aldridge : Dobro
Jerry Douglas : Dobro
Mark O'Connor : Fiddle, Viola, Mandola

Angel Band / Emmylou Harris

何がなんだか訳わからんうちに始まってしまった『Bluegrass的こころ』であるが、とりあえずは無難にディスク・レビューなんぞをしてみたいと思う。
一発目に何をとり上げるかは頭を痛めるところだが、単純に最近一番よく聴いているブルーグラス系アルバムという基準で選ぶことにした。
はっきり言ってエミルー・ハリスはカントリーのシンガーだし、このアルバム自体もバンジョー・レスのゴスペル集だし、ブルーグラス・コーナーの初っ端としてはちょっと不似合いなアルバムかも知れない。
だってしょうがないじゃん、最近よく聴いてるんだもん。

昨年の秋くらいだろうか、スカイパーフェクTVで『Farm Aid』という十数年前に行われた野外イベントを放送していた。誰が出るからという訳ではなくなんとなく見ていたのだが、思いがけず登場したのがエミルー率いるエンジェル・バンドだった。
不意を突かれたこともあるが、ちょっとやられてしまったのである。特にビンスに。ビンスの泣きのボーカルに・・・・・。
今やカントリー界のトップスターにのし上がってしまったビンスであるが、この当時はボス・エミルーの下で謙虚に振舞う好青年といった様子で、ちょっとはにかんだ表情がなんとも初々しかった。しかしボーカルは確実に泣いていた。実はかなりやられてしまった。

ブルーグラス・ファンならDavid Grismanを中心としたメンツによる『Here Today』(1982)という名盤をご存知のことと思うが、その中でやたらコブシの回るボーカルを披露しているのがビンス・ギルである。『Lonesome River』『My Walking Shoes』などかなり泣き度が高いが、圧巻は『Making Plans』である。ソロパートの「♪ I'm getting ready to leave〜」というフレーズなんてもう泣き泣きである。
で、『Farm Aid』を見終わったあと久々に『Angel Band』を引っ張り出してきて聴いてみたのだが、1曲目で完全にやられてしまった・・・・・良すぎる。
エミルーのリードの下にファルセット気味にビンスがしかも泣きで、さらにその下にこれまた職人芸としか言いようのない上手さのカール・ジャクソンが・・・・・良すぎる。

カール・ジャクソンは実に趣味の良いミュージシャンだと思う。そういえば、私の尊敬する先輩でドブロ弾きの湊氏が以前「何につけても俺がこうしたらカッコイイだろうなと思うことは、たいてい既にカール・ジャクソンがやってるんだよ」というような発言をしていた。あんたは一体何様よ、という意見はこの際おいとくとして、言い得て妙という気がしてならない。
とにかく、それ以来『Angel Band』は棚に収まることなく、常にCDプレーヤーの周辺に転がっている。

実はこのアルバムをかけるとき私はいつもエミルーとデュエットしている。つまり、ビンスのパートを歌っている。現在バンド活動をしていないのでこうした屈折した聴き方に楽しみを見出しているのである。はぁ〜、春になったらバンドやりたいなぁ〜。
あ、そうそう、もう一つ、このアルバムの聴き所としてビンスの実に実に深い音色のマンドリンが聴けるという点も挙げておこう。

※このレビューは2000年3月にスタートし4月に終了した『松本和茂のブルーグラス的こころ』 から抜粋したものです。


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The Fifth Child / Butch Robins (1980)
A1. I'll Be On That Good Road Someday
A2. Cumberland Gap
A3. Jerusalem Ridge
A4. My Father's Footsteps
A5. Kansas City Railroad Blues
B1. Dear Old Dixie
B2. Crossing The Cumberlands
B3. Cripple Creek
B4. Mississippi Waltz
B5. Bluegrass Breakdown
B6. Blue Ridge Cabin Home
Butch Robins : Banjo
Sam Bush : Mandolin
Alan O'Bryant : Guitar, Vocals
Blaine Sprouse : Fiddle
Randy Davis : Bass
Terry Smith : Bass (A5, B5)
Bobby Osborne : Tenor Vocal (B6)

The Fifth Child / Butch Robins

もの凄いエネルギーを発散しているアルバムである。
なんというか、抑えきれない感情が音と音の間から溢れ出ている、そんな感じである。

ブッチは1977年から数年間Bluegrass Boys(Bill Monroeのバンドですよ)のバンジョー奏者を務めた。その時にビル・モンローから得たエネルギーというかブルーグラスという音楽が持つパワーみたいたものを、ブッチはこのアルバムに詰め込んだのだろう。
このアルバムの『Bluegrass Breakdown』を聴くと体が熱くなる。なんかジッとしていられない衝動に駆られてしまう。
当時ブッチと最も通じ合っていたであろうサム・ブッシュが、ブッチの気持ちに応えるごとく入魂のプレーを聴かせている。ブレインもそれにしっかり応えている。アランのLester Flattをたっぷり意識したボーカルも嬉しい。
ちなみにタイトルの『The Fifth Child』は、「バンジョーは、マンドリン、ギター、フィドル、ベースに次ぐブルーグラスの5番目の子供」というビル・モンローの発言に由来しているそうだ。ブルーグラス・ボーイとして正装して5番目の子供を抱いているブッチがいる。引き締まった表情が実によい。

そういえば全然話は変わるけど、こないだスカイパーフェクTVでグリスマンの来日公演やってましたねぇ。
『pbs(ピーター・バラカン・ショウ)』という番組だったんだけど、どうせ番組の一部でチラッと紹介される程度だと思っていたら、番組まるまる(約1時間)だったのでちょっと驚いた。
しかし、ピーター・バラカンは本当に素晴らしい。あらゆる音楽に対する造詣の深さといい、あの物腰のやわらかさといい、大好きです。
それにしても、グリスマンいつのまにか巨大(横方向)になりましたなぁ。

※このレビューは2000年3月にスタートし4月に終了した『松本和茂のブルーグラス的こころ』 から抜粋したものです。


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John Hartford and the Hartford Stringband / Good Old Boys(1999)
1. Good Old Boys
2. On The Radio
3. The Cross-Eyed Child
4. Watching the River Go By
5. The Waltz of the Mississippi
6. Mike and John in the Wilderness
7. Owl Feather
8. Billy the Kid
9. Dixie Trucker's Home
10. The Waltz of the Golden Rule
11. Keep on Truckin'

Good Old Boys / John Hartford and the Hartford Stringband

ジョン・ハートフォードが好きだ、理屈抜きに、文句ナシに。

初めてジョンを見たのは1991年、ニューヨーク州のピースフル・ヴァレーというフェスでのことだった。
それまでジョン・ハートフォードに対して抱いていたイメージは“奇”なる人であった。『Aereo Plain』(1971)の異様なジャケ写とか、ビデオで見る奇抜なパフォーマンスなんかもあって勝手にジョンは奇人だ、変人だと思い込んでいたのである。
ところがフェスの会場で実際に会ったジョンはメチャメチャ優しい紳士だった。Tシャツを買ってサインを求めると、とっても丁寧に応えてくれた。にこやかに世間話でもするように話し掛けてくれた。そして、ステージは・・・・・それはそれは素晴らしいものだった。
ジョン(Banjo, Fiddle)と息子のJamie Hartford (Mandolin)、そしてDarrin Vincent (Bass)の3人だけのシンプルな演奏だったが、どの曲も深く深く心に染みた。聴衆を大爆笑&大合唱の渦に巻き込んでしまう抜群のエンターテイメントで、会場中が和やかな温か〜い雰囲気に包まれていた。

私の場合、ミュージシャンの好き嫌いを決定する要因として「人柄」というのが非常に大きなウエイトを占めているのだが、それ以来ジョン・ハートフォードのランキングが急上昇したことは言うまでもない。もう完全にハートフォードにハマってしまった。

ジョンの長いキャリアのどの年代のどの作品からも彼の人柄が滲み出ている。そして、その根底にあるものは『愛』だ。書いてて恥ずかしくなるような言葉だが、他に言い表しようがない。

あーーー、気が付くと全然ディスクレヴューしてないっ!
でも今日はもう時間がないから、ええぃ、こうしてしまえ、〔続く〕

※このレビューは2000年3月にスタートし4月に終了した『松本和茂のブルーグラス的こころ』 から抜粋したものです。


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