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Bluegrass駅伝的アルバムレビュー「Bluegrass Times」
 
駅伝的アルバムレビュー「BluegrassTimes」 / 酒井弘治 -bass-

That High Lonesome Sound / Old and In the Way(1996)
1. Hard Hearted
2. The Great Pretender
3. Lost
4. Catfish John
5. High Lonesome Sound
6. Lonesome Fiddle Blues
7. Love Please Come Home
8. Wicked Path of Sin
9. Uncle Pen
10. I'm On My Way Back to the Old Home
11. Lonesome L.A. Cowboy
12. I Ain't Broke But I'm Badly Bent
13. Orange Blossom Special
14. Angel Band
Vassar Clements : Fiddle
Jerry Garcia : Banjo, Vocals
David Grisman : Mandolin, Vocals
John Kahn : Acoustic Bass
Peter Rowan : Guitar, Vocal
Label/No etc. Acoustic Disc / ACD-19
お買い求め情報 BluegrassコーナーのあるCDショップにならあると思います。
備 考 CD発売は1996年(推定)、音源は1973年

That High Lonesome Sound / Old and In the Way

1975年「Old & In the Way」というアルバムが発表されました(もちろんLP盤です)。
このアルバムとほとんど音源を同じとし、1996年(推定)にCDとして発表されたのが、 この「That High Lonesome Sound」になります。
音源は、1973年10月1日、8日サンフランシスコ、Boarding Houseでのライブです。

「Old and In the Way」のメンバーについては、今更語る必要はございません。 見ての通り、ご存知の通りのBluegrass界における巨匠達です。
しかしながら、いわゆる「ど・ブルーグラス」的ではなく、Jazz、Rock、Folk業界でもそれぞれに名の知れた 面々です。このような音楽的な経歴を経たメンバーによるBluegrassは、 きっとBluegrass初心者にも受け入れやすく、玄人にも納得のいくものだと思います

かく言う私もBluegrassを始めたばかりの大学1年の学祭の時、当時北海道Blugrass界に王者の如く君臨し、 今なお後輩たちに多大なる影響力を持つ"恋のいそぎんちゃく"の演奏による 「Old and In the Way」(この曲は先に発表されたアルバムのタイトル曲です。)を聴き、深い感銘を受けた事を 覚えております。

さて、このCDをプレーヤーに入れると、1曲目"Hard Hearted"が強力にリスナーの心を掴みます。 Vassarのキックオフにワクワクします。コーラスにゾクゾクします。
もちろん2曲目以降リスナーの心を放しません。
そんな中、特に私が好きなのは5曲目"High Lonesome Sound"です。 Bluegrass Festivalの様子を歌った曲との事ですが、英語の解らない私にもBlugrassの楽しさが 伝わります。
9曲目"Uncle Pen"もお気に入りです。Peter RowanのGランが堪能できます。松本和茂先生のGランが 私の頭の中を駆け巡ります。

このCDはBluegrass初心者にお薦めしたい1枚です。巨匠達によるバンジョー、マンドリン、フィドル、 ギターは、それぞれに特徴を出し、すばらしさが伝わってきます。また、楽器ばかりでなく、ボーカル にも感銘を受けることでしょう。
是非このCDを聴いて、Bluegrassの世界にも目を向けてもらえればと願って、 私の第1回のアルバムレビューを締めさせて頂きます。
ありがとうございました。


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All in Good Time / Sally Van Meter
1. High Country
2. Blues For Your Own
3. Tyson's Dream
4. Crazy Creek
5. Anne's Waltz
6. Weary Lonesome Blues
7. The Bird That I Held In My Hand
8. Amor De Mi Vida
9. Road To Columbus
10. Damien Miley/The Idlers OF Belltown
11. We're Not Over Yet
Sally Van Meter : Dobro, Vocal
Scott Nygaard : Guitar
John Reischman : Mandolin
Tony Furtado : Banjo
Mike Marshall : Fiddles
Beth Weil : Bass
Daniel Van Meter : Mandolin, Vocal
Todd Phillips : Bass
Jerry Douglas : Dobro, Percussion
John Miller : Guitar
John Pedersen : Uillean Pipes
Kathy Kallick & Ed Johnson : Vocal
Label/No etc. SUGAR HILL / SH-CD-3792
お買い求め情報 Bluegrass専門店にしかないかも。
備 考 CD発売は1991年(推定)

All in Good Time / Sally Van Meter

彼女は最もわかり易い紹介をすれば、Good Ol' Personsのドブロ弾きです。(バンジョーも弾く)
正直言ってGood Ol' Personsについてはあまりよく知りませんので、城 真一郎先生のGood Ol' Personsのレビューをご覧下さい。
私はドブロが好きです。あのサスティンの効いたなんとも言えない哀愁のある音がたまりません。しかしながら非常にマイナーな楽器であるが故、BLUEGRASSの中でもあまりお目にかかれません。このアルバムのプロデューサーであり、ドブロプレーヤーの第一人者であるJerry Douglasでさえ、「ドブロ弾きはあまり評価されない」と解説の中でコメントしております。

さて、アルバムの方に移ります。全体的には軽やかな仕上りです。
1曲目の「High Country」はご存知のとおりフィドルチューンの曲ですが、見事にドブロチューンと化しております。(しかしMike Marshallのフィドルのブレークを聞くとやはり安心してしまうのでした。)
9曲目「Road To Columbus」もおなじみのフィドルチューンですが、こちらは原曲を軽めにしただけという感じがします。
2曲目、6曲目、7曲目と歌入りです。インストゥルメンタルも良いのですが、この歌入り、特に2曲目、6曲目がかっこいいです。2曲目「Blues For Your Own」は、タテノリの非常にパンチの効いた曲になっております。6曲目「Weary Lonesome Blues」はドライブするスポーツグラス系です。ドライブの中にも正確なBanjoのロール、そうあのBela Fleckのような正確無比なロールが耳に残ります。(私はずっとSallyがBanjoを弾いているもんだと思っておりましたが、違ってました。)どちらもこれぞBluegrassといったかっこいい曲です。

Sallyは素直なドブロプレーヤーだと思います。ドブロと言えばJerry Douglasですが、彼の場合非常に技巧的なフレーズを所々に織り込んで我々を唸らせます。時にはTony Riceのような無理やりな力技フレーズもあり、本当に"すげぇ"と思えてしまいます。
一方、Sallyの場合、特にこのアルバムではJerryばりのテクニカルなフレーズは聞かれません。その分素直に聞こえ、安心して聞いていられます。
先述のとおり、Bluegrassの中でもレアな楽器であり、更に女性プレーヤーともなれば尚更です。(天然記念物なみであると言っては大げさか?)10年くらい前に日本一の女性ドブロプレーヤー(と自分で言っていた)の草間美華ねえさんが、Sallyが一番好きとおっしゃられておりました。納得でございます。

Jerryばかりがドブロ弾きではありません。 Uncle Josh、Andreさん、湊さん、美華ねえさんとすばらしい面々です。その中でもSallyは、Jerry以外のドブロを堪能させてくれます。また、Contemporary Bluegrassとして聞き易いアルバムです。皆さんも一度ご試聴下さい。
ありがとうございました。


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Slide Rule/ Jerry Douglas 1992
1. Ride The Wild Turkey
2. Pearlie Mae
3. When Papa Played The Dobro
4. We hide & Seek
5. I Don't Believe Met My Baby
6. Shoulder To Shoulder
7. Uncle Sam
8. It's a Beautiful Life
9. Rain On Oliviatown
10. Hey Joe
11. A New Day Medley
12. Shenandoah Breakdown
Jerry Douglas : Dobro
Scott Nygaard : Guitar
Mark Schatz : Bass
Stuart Duncan : Fiddle
Adam Steffey : Mandlin
Craig Smith : Banjo
Guest Musician : Russ Barenberg(G), Sam Bush(Mn), Alison Krauss(Vo), Artie Mcglynn(G), Tim O'brien(Mn)
Alan O'bryant(Vo),Maura O'connell(Vo), Ed Snodderly(Vo), Eugene Wolf(Vo)
Label/No etc. Sugar Hill/KICP267
お買い求め情報 日本盤が出るくらいですからきっと手に入りやすでしょう
備 考 日本盤はKING RECORDから発売

Slide Rule / Jerry Douglas

第2回に続きドブロ弾きのレビューになりました。Jerryの6枚目のソロ・アルバムです。
1枚目の"Fluxology"と2枚目"Fluxedo"は、非常にブルーグラステイストの効いたアルバムであり、3枚目"Under The Wire"、4枚目 "Changing Channnel",5枚目"Planty Early"はJazzyな仕上りです。そこで6枚目となるこのアルバムでは、再びブルーグラスに回帰しています。
久しぶりのブルーグラス・アルバムですから、Bela Fleck, Sam Bush, Mark O'cornerが脇を固め、荘厳なアルバムを仕上げてくるのかと思いきや、なんと彼の選んだメンバーは彼よりも若いメンバーでした。ベースのMark Schatzだけが、彼より上だと思います。 1番の要であるベースだけは経験豊富な人材を選び、ビシッとまとめようとしたことが伺えます。(この考えは私がベース弾きと言う思い上がりでしょうか)
しかし若いメンバーだからと言って、決して薄弱な仕上りではありません。所々に華やかなゲストが参加し、すばらしいアルバムになっております。

さて曲の方はと言うと、1曲目からタイトなブルーグラスを聞かせてくれます。それぞれのソロは、若いながらもJerryに選ばれるだけのことはあると納得させられます。1曲目からすっかり引き込まれてしまうのです。
私のお気に入りは、4曲目と5曲目、8曲目です。特に4曲目はブルーグラスと言うより、3枚目から5枚目のアルバムで聞かせたStrength in Numbersを思わせるニュー・アコースティック風味のインストです。(日本盤CDのライナー評そのままの表現です。)
実は'93か'94年にNHKのBS放送で「American Music Shop」を放送しており、ある回でその年のIBMAの受賞者を一堂に介し、各パートの受賞者によるセッションでこの曲を演奏していました。
面子はと言うと、Jerry Douglas(dobro), Sam Bush(mandlin), Stuart Dunkan(fiddle), Mark O'cornar(guitar), Alison Brown(banjo), Roy Huskey Jr.(bass)という強力な布陣であり、また客前での演奏と言うこともあり、残念ながらこちらの方に軍配が上がると思います。まあ面子が面子ですから致し方ないです。
もちろん、この曲のアルバム中の仕上りはすばらしいのですが、貫禄負けと言うところですかね。

5曲目は、Alison Kraussを、8曲目はMaura O'connnellのヴォーカルをフィーチャーした曲です。どちらも彼女達のヴォーカリストとしての魅力を十分引き出していて、聞いているととても和やかな気持ちになります。

最後にバリバリのドライブを効かせた"Shenandoah Breakdown"で締めくくられますが、これを最後にするところが憎い。ブルーグラッサーの血を思いっきり騒がせてくれます。すぐに楽器を持ちたくなってしまいます。
さあ皆さんも、Jerryのブルーグラス・アルバムを聞いてみましょう。

出張の為、締切りも守れずに、かなりやっつけ仕事的になってしまいました。次回はもうちょっと内容を濃くしたいと思います。
あ、そうそう、本文中に書きましたNHK BSのVIDEOはありますので、見たいというご希望あればご連絡下さい。
どうもありがとうございました。


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One Way Track/ Boone Creek
1. One Way Track
2. Head Over Heals
3. Little Community Church
4. Mississippi Queen
5. In The Pines
6. Cant't Hear Me Calling
7. No Mother Or Dad
8. I'm Blue, I'm Lonesome
9. Daniel Prayed
10. Sally Gooden
11. Paradise
12. Pathway Of Teardrops
13. Waling In Jerusalem
Ricky Skaggs : Mandolin, Fiddle, Guitar
Wes Golding : Guitar
Jerry Douglas : Dobro
Terry Baucom : Banjo, Fiddle
Steve Brayant : Bass
Label/No etc. KICP 117 / King Record
お買い求め情報 CDは日本盤ですが、もう廃盤になったかも?
備 考 もともとはSugar Hillの第一弾アナログ盤との事

One Way Track / Boone Creek

久しぶりにジャケットやライナーの写真を見て、リッキーやジェリーが若いので笑ってしまいました。
ジェリーはまだ歯並びが悪く、まだ儲かる前だと再認識しました。
しかしながら、演奏の方はと言うと、今なお新鮮に聞こえます。基本的にはトラディショナルなのでしょうが、ライナー中の言葉を借りれば、トラッドの良さを失わせない「ニュートラッド」というものになっています。これを私の知る言葉では、コンテンポラリーと言うのだと思います。70年代中盤当時のコンテンポラリー・ブルーグラスという事になります。
しかし、今聞いても新鮮に聞こえるのは何故でしょう?
70年中盤のコンテンポラリーという事は、日本の歌謡界で言えば、なつメロになりつつあるところのものではないでしょうか?
私が思うに、いわゆるビル・モン、フラット&スクラッグスが確立したソリッドなスタイルがあまりにも完璧な為、少しでもニュアンスの違うものは、新しいものとなってしまうのですね。
つまり、基準点が50年、60年ですから、それ以降のコンテンポラリーはいつ聞いても新鮮に聞こえるのでしょうね。

実際のところ、このアルバムではビル・モン、フラット&スクラッグスの曲、トラッドが多いです。確かにソリッドな部分を崩さず、綺麗にかっこ良く仕上げられていると思います。
一方、彼らのオリジナルとなる1曲目「One Way Track」、4曲目「Mississippi Queen」は更にかっこ良い曲です。トラッドな曲の新しいアレンジの中に彼らの良さが発揮されているのですが、この2曲のオリジナルには、もっと濃い何かが入っているように感じます。

また、このCDにはオリジナルのSugar Hillのアナログ盤には入っていない3曲のボーナス・トラックが入っています。おまけにライブ盤です。これだけでもとってもお得な気分になのに、すばらしいコーラスを聞くことができ、お得感が増します。
ところで、日本盤だけのことはあり、すべての曲の歌詞が記載されています。もちろんボーナス・トラックの歌詞も入ってます。律儀にMCまで書いてあります。これが不思議です。この違和感を訴えてレビューを締めたいと思います。
有り難うございました。


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New Grass Revival/ New Grass Revival
1. Pennies In My Pocket
2. Cold Sailor
3. I Wish I Said(I Love You One More Time)
4. Prince Of Peace
5. Ginseng Sullivan
6. Whisper My Name
7. Great Balls Of Fire
8. Lonesone Fiddle Blues
9. Body And Soul
10. With Care From Someone
Sam Bush : Mandolin,Fiddle,Guitar,Bottle Neck Mandolin
Courtney Johnson : Banjo
Curtis Burch : Guitar,Dobro
Edo Walker : Bass
Label/No etc. Highland Music, Inc./1992
お買い求め情報 CDならば比較的手に入り易いのでは。
備 考 オリジナル(アナログ盤)は貴重。

New Grass Revival / New Grass Revival

言わずと知れたNew Grass Revivalのデビュー盤です。私はCD盤(再発物)しか持っておりませんので、オリジナル・アナログ盤をお持ちの方を羨ましく思います。
オリジナルの日本盤には「火の玉ロック」の邦題がついていたかと思います。この時点で、すばらしいと感じずにはいられません。
「火の玉ロック」ですヨ。このタイトルによって単なるブルーグラスではないと訴えたかったのでしょうか。
確かにロックの名曲「Great Balls of Fire」を収録しておりますし、一番印象的です。うちのカミさんでさえ「トップ・ガン(映画)でトム・クルーズの友達(名前忘れました)がピアノを弾いて歌っていた曲」として認識できたくらいです。

オリジナルは1973年の発表ですので、既に28年になります。NGRと言えど、さすがに時代を感じてしまいます。
録音が古いという録音の機材的な面ではなく、やはり、28年前のリズム、ビートなんでしょうね。
今聞いても、NGRはすばらしいと感心してしまいますが、個人的にはジョン・コーワンではなくて寂しいです。
私の中では、ジョンの甲高いテナーがあってこそのNGRなのです。同じベース弾きとして、実は、彼のベースに関しては特にコメントはないのですが、やはりあのヴォーカルの存在は大きいと思います。

今回のレビューにあたって、久しぶりにこのアルバムを聞き、上記のような感想を抱いた訳ですが、コートニー・ジョンソンのバンジョーってこんなんだったかなという印象も受けました。
一音ずつ確実に置いていっている感じがしました。ちょっと気になりましたので、この後のアルバムではどうなのかを確認すべく、次の機会に聞いていきたいと思います。(どうしてすぐに聞かないのかと、自分でも思いましたが、とりあえずこのレビューが最優先なのです。)
このアルバムの中では、やはり「火の玉ロック」に気を引かれますが、一番のお気に入りは「Lonesome Fiddle Blues」ですね。NGRと言えば長いインスト。デビュー作からやってくれてます。
どこが良いって、説明できないですが・・・。特にギターのキック・オフが好きです。ソロ自体は後半に?となってしまうところもご愛嬌ですかね。

レビューにNGRを選んだ事は実は後悔しております。ブルーグラス人ならば皆がNGRに対して思い入れ(好き嫌い問わず)があるでしょうから、何をどう書いても、人の眼を気にせざるをえません。
従いまして、今回のレビューは曲の内容には触れないようにしました。
ブルーグラス・ビギナーになってしまいました。(確かに最近遠ざかっているので、あながち間違いではないのですが。)
NGRのデビュー作にもかかわらず、非常に短いレビューになってしまい、NGRをなめてんのかと、自分の未熟さを嘆くばかりです。
今回のレビューはこの辺でご容赦下さい。
そろそろ新しいCDを買ってこねば、と思いながら、脱稿。


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