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Bluegrass駅伝的アルバムレビュー「Bluegrass Times」
 
駅伝的アルバムレビュー「BluegrassTimes」 / 清水真規 -banjo-

Peter Rowan / Peter Rowan (1978)
1.Outlaw Love
2.Break My Heart Again
3.A Woman In Love
4.When I Was A Cowboy
5.Land of the Navajo
6.The Free Mexican Airforce
7.Panama Red
8.Midnite Moonlite
9.The Gypsy King’s Ferewell
Flaco Jimenez : Accordion
Mike Seeger : Autoharp
Jesse Ponce : Bajo Sexto
Lamar Greer : 5 String Banjo
Roger Mason, Buell Neidlinger, Todd Phillips : Acoustic Bass Fiddle
Richard Greene, Tex Logan, "the Blue Fiddler" : Fiddle
Jimmy Fuller : Pedal Steel Guitar
Barry Mitterhoff : Slide Guitar
Estrella Berosini, Laura Eastman, Alice Gerrard : Harmony Vocals
Peter Rowan : Voice,guitar,Mandola
Label/No etc. Flying Fish Records,Inc.
お買い求め情報 普通に買えると思います。CDです。
備 考

Peter Rowan / Peter Rowan

北大ブルーグラス研究会OB(91〜97)の清水と申します。
先日の飲み会でハシモトさんにうまく乗せられ、レビューを書くことになりました。 よろしくお願いいたします。

レビューというのは、書き手にとっては何か重苦しい雰囲気の漂うワードでして、 私も一丁前にプレッシャーみたいな何かを感じ、 書く前に、過去の方々が書いたレヴューを改めて幾つか読ませていただきました。
すると!なんということか、結構あるじゃないですか。たくさん。 レヴューという言葉の重苦しさから、私を開放する数々の文章が。 やはり、論文みたいな重苦しいものではないのですね。 そうです。まじめなレヴューばかり書いていたら、 駅伝がこんなに続くはずはないのです。
・・・安心しました。

では、まず、私のブルーグラスリスナーとしてのポジショニングから。
平面のグラフをイメージしてください。

・X軸(−5〜+5)
  知識が豊富なディープリスナー ⇔ いつもなんとなく聴いているライトリスナー
・Y軸(−5〜+5)
   直球ブルーグラス好き ⇔ 変化球ブルーグラス好き(注:カゴハシ君の分類による)

という2軸をもって、ブルーグラスリスナーのポジショニングを仮に定義します。
私はライトリスナーで、直球も変化球も好きだというところでしょうか?
もちろん、ディープリスナー達の驚異の耳と膨大な知識に憧れたりもしますが、 やはり、私はライトリスナーのようです。
座標軸では(+4、0)といった位置です。
ライトなリスニングで、直球も変化球も考えずにちょこちょこ振ります。

私の大学サークル時代には、(+、+)か(−、−)領域の人が多かったと思います。 少数派ですが、(−、+)の人もいました。(+、−)の人はもっと少なかったかもしれません。 分布が不均一なのはなぜでしょうか?
結論としては、私の勝手なイメージだけで実状は違うということだと思いますが。

では、私の1枚。
変化球どころか、このアルバムはブルーグラスのマウンドにもほとんど立っていないのですが、 「Peter Rowan」です。
今、手元にこのCDがあるのですが、ジャケットには「Peter Rowan」としか書いてありません。
これが、アルバム名を示したものか、ただアーティスト名を示したものなのかは、 私には判別できませんが、おそらく、アルバム名なのでしょう。
とりあえず、私は勝手ながら、このアルバムはPeter Rowanにとって自信の1枚であり、 自分の名前をアルバム名にしたのだろう、と納得することにしました。
人間、わからないことがあると、とことん調べて納得するのもひとつの道ですが、 事実に基づき判断するのとは別に、勝手に自分で理由をつけて満足する方法も、 意外と便利だと改めて感じた次第です。

このアルバムは私が学生時代、朝の目覚めの時にかけていた、お気に入りの1枚です。
たいてい、目覚めにかけるアルバムはその時の不機嫌な印象が蓄積していくがゆえに、 不条理にもキラわれてしまうことが多いと思いますが、このアルバムは違いました。
この点に関しては今も原因は謎です。 一言で言ってしまうと、プーンとフェロモンが漂うようなアルバムで、 この手のアルバムは人に「これいいよ」と勧めるのは何とも恥ずかしく、 しかも、理路整然と批判された時は非常にダメージが大きいものです。 が、それにしても、くせになってしまいます・・・。こういう、アクの強い派手めなアルバムは。

それでは、前置きが長くなりましたが、1曲目から。
イメージしてください。 平日、朝の9時すぎ、天気は快晴。 ふとんの中でうつらうつらしていると、 いきなり、本アルバムがかかり始めます・・・。

1.Outlaw Love
曲の始まりがいかにも朝の始まりという感じです。 ややもすると、わざとらしく感じられかねないこの曲も、 朝のピュアな心には、かならずしや、すんなり入ってくるでしょう。 フェードアウトして終わっていく感じも、「まだ寝ていていいよ。」 とやさしく語りかけているかのように感じてしまいます。

2.Break My Heart Again
1曲目の感じを継承していますが、アコーディオンが登場します。 ハーモニーヴォーカルとぴったりです。 当然、この曲では、まだふとんから出る気は沸かないことでしょう。 しかし、心の方はだんだん覚醒してきました。

3.A Woman In Love
1曲目から続いていたやさしくスウィートな感じが最高潮に達します。 フィドルが何とも素晴らしいです。 当然、この曲でも、まだまだふとんから出る気は沸かないことでしょう。 しかし、心は完全に覚醒しました。

4.When I Was A Cowboy
バンジョーが登場し、いきなりヴォーカルもアグレッシブです。 ピーターローワンが次のナバホに対するウオーミングアップをしているのでしょうか。 なんだか調子を狂わされつつも、そろそろ、ふとんから出る準備です。

5.Land of the Navajo
アルバムの中締めといった感じの名曲です。 しかしながら、聴いていると、なんだか再び意識が遠のき、眠たくなってきました。 これは、ピンチかもしれません。 1〜4曲目までの起きるための準備が台無しになってしまいそうです。

6.The Free Mexican Airforce
再びアコーディオンの登場で、ナバホの雰囲気を見事に払拭しました。 1〜4曲目までの流れに一気に引き戻されます。さすがです。 「いやいや、寝ていてはいけない。 今日は晴れていて素晴らしい一日になるだろう」と、 一転、ポジティブな気持ちにさせられます。 うしろで、アー、ヒッヒィーとかイヤァー、アミーゴ!とか言っているのが、 よく分りませんがなんとも気持ち良いです。

7.Panama Red
寝ている場合ではないようです。もうノリノリです。 体の方もついに目覚めてきました。

8.Midnite Moonlite
・・・あれ、もう夜か? せっかく目覚めたのに、何という時間錯誤な・・・。 ナバホに続き、目が覚めたところで、 また闇の世界へと引き戻されてしまいそうなタイトルです。 曲の方は、言うまでもありません。名曲です。

9.The Gypsy King’s Ferewell
いつのまにかに最後の曲です。 考えてみると、アルバムの始まりから、 たっぷり、30分は経過しています。 もしかすると2周していたかも。 そう言えば大学・・・。もう遅刻だ。

もう、10年近い昔の話です。
出勤時間という社会人としての最低限の責任を果たさなければならない今は、 なかなかこのような贅沢な聴き方はできませんが、 生活に密着していた思い出に残るアルバム・・・。

ところで、ここまでお読みになった方で、不思議な気分になられた方もいるかもしれません。 皆さんお分かりのように、曲の歌詞は、私の英語のヒアリング能力が非常に低レベルなこともあり、 まったく考慮していません。しかし、知らない方が私にとって、いいかもしれません。 もし、朝の目覚めに不相応な歌詞内容であれば(経験上、その危険性は極めて高いと予想しますが)、 もう、二度と朝に流すことはできなくなるかも知れないのです。 思い込み聴きも、ライトリスナーの特筆すべき特権です。 大胆にもインストゥルメンタル、いや、環境音楽の聴き方に近い感じでしょうか?

全然アルバムの中身を研究していない、お気に入りの1枚の紹介でした。

それでは、どうもありがとうございました。


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