Music Archive
 Review
EP Records
Rhythm & Blues
Jazz etc.
Bluegrass駅伝的アルバムレビュー「Bluegrass Times」
 
駅伝的アルバムレビュー「BluegrassTimes」 / 津久井陽司 -guitar-

At the Old School House / Johnson Mountain Boys (1987)
1. Intro/Black Mountain Blues
2. Let the Whole World Talk
3. Long Journey Home
4. Bluest Main In Town
5. John Henry, the Steel Driving Man
6. Weathered Gray Stone
7. Unwanted Love
8. Ricestrow
9. Waltz Across Texas
10. Five Speed
11. Dream of a Miner's Child
12. Georgia Stomp
13. Sweetest Gift
14. I've Found a Hiding Place
15. With Body and Soul
16. Orange Blossom Special
17. Get Down On Your Knees and Pray
18. Going to Georgia
19. Now Just Suppose
20. Don't You Call My Name
21. Do You Call That Religion
22. Daniel Prayed
23. Wake Up Susan
Duddley Connel : Lead Vocals, Guitar
David McLaughlin : Vocals, fiddle "Let the Whole World Talk", Mandolin
Eddie Stubbs : Vocals, fiddle
Tom Adams : banjo, mandolin "Let the Whole World Talk"
Marshall Willborn : bass, vocals
Label/No etc. ROUNDER CD 0260/0261
お買い求め情報 ブルーグラスのレコード屋さんに注文しましょう
備 考 その他、情報等

Old School House / Johnson Mountain Boys

本作品は Johnson Mountain Boys のライブレコーディングです.彼らは 1980年頃に登場したバンドでありながら、古いブルーグラスの土臭さをバ リバリに感じさせるバンドであります。古いという言葉は漠然としているので 調べてみたのですが、彼らが演奏する曲のほとんどは、ブルーグラスという言 葉が登場したばかりの1950年代の曲だそうです。

彼らはかっこいいフレーズなんか登場しない全くのソリッド なブルーグラスをギンギンにやりまくります. 特にこのレコードはパワフル感 を存分に堪能できます.

Duddley Connel はがんがんにギターを弾きまくりつつ,とても気持良 さそうに歌いまくります.G ランは決まりまくりだし,歌は感情こもりまくり です.

Eddie Stubbs は気違いのようにフィドルを弾きまくります.普通,「気違い のように弾く」というのはプレイに対して使う言葉ですが,彼の場合は見ため も本当に気違いのようです.きっと彼の弾いてる姿をみるとあまりの恐さに夜 眠れなくなることでしょう.

Tom Adams のバンジョーはカンカン鳴りまくってそれはもう素晴らしいのひと ことにつきます.

そんな非常に熱い演奏をしつつもリズムが非常にタイトであるというのが,彼 らの凄いところだと思います.このレコードには信じられないくらい早い曲が, 数曲収められていますが,リズムは一糸たりとも乱れません.「Five Speed」 なんかはきっとメトロノームのテンポで180はあるでしょう.かつ素晴らし いピッキングと,正確なテンポを保ちつつドライブしまくる技術はとても人間 技とは思えません.

残念なのは,そんな彼らの熱さを堪能できるのは,どうやらライブに限られると いうことであります.スタジオで録音されたレコードを聴くとどうしてもつま らないと感じてしまいます. ライブビデオなんかみるとどれも良いんですけど.

また,たしかにパワフルな演奏は彼らの大きな魅力のひとつですが,それだけ ではありません. このレコードを聴くと彼らのブルーグラスに対する愛情がとても良く伝わって きます.ソリッドなブルーグラスはいいなと感じさせてくれる一枚だと思いま す.


↑top

Too Late To Cry / Alison Krauss
1. Too Late To Cry
2. Foolish Heart
3. Song For Life
4. Dusty Miller
5. If I Give My Heart
6. In Your Eyes
7. Don't Follow Me
8. Gentle River
9. On The Borderline
10. Forgotten Pictures
11. Sleep On
Alison Krauss : Lead Vocals, Fiddle
Sam Bush : Mandolin
Russ Barenberg : Guitar
Roy Huskey : Bass
Jerry Douglass : Dobro
Tony Trischka : Banjo
John Schmaltz : Banjo
Lonnie Meeker : Guitar
Label/No etc. ROUNDER CD 0235
お買い求め情報 レコード屋さんに注文しましょう
備 考 その他、情報等

Too Late To Cry / Alison Krauss

アリソン・クラウスといえばきっと誰しも 「Alison Krauss and the Union Station」 を思い浮かべることでしょう。なにしろブルーグラスのミュージシャ ンがミリオンセラーを記録してしまうんだから、凄いといわざるを得ないでしょう。 そんな中、今回紹介するのは唯一彼女のレコードで「Alison Krauss and the Union Station」ではないレコードです。

ブルーグラスをはじめた当初、先輩がいろいろレコードを聴かせてくれたまし たが、アリソン・クラウスの印象は「きれいな感じの曲をかっこいい声で歌う 人なんだなあ」といったところで、特別好きにはなりませんでした。ある日誰 かとアリソン・クラウスのレコードを聴いていて、私は愚かにも「このフィド ルすごくいいね、誰?」と質問してしまいました。彼女の透明感のある歌声は たしかに特徴的なのですが、すばらしいフィドル弾きだというのはとても有名 な話だったのでした。

それ以来、当時4枚出ていたアリソン・クラウスのレコードを集めて聴きはじ めたわけですが、現在も大好きといえるのはこの1枚目のみであります。 このレコードに収められている曲は、ブルーグラスのスタンダードな曲とはいえない ものばかりであります。基本的に私はブルーグラスは3コードのスタンダードな ブルーグラスが大好きで、マイナーコードをいれたりしたポップな感じの曲は あまり好きになれません。例えばポップス等のカヴァー等をバンジョーのロー ルで演奏されても、いまいちしっくりこないわけです。曲がいいのはわかるけ ど、ブルーグラスでやらなくてもいいのではないかと思ってしまう訳です。 ところが、このレコードに限っては違和感を感じることなくブルーグラスの曲 として楽しむことができてしまいます。

中でも7曲目が大好きです。この曲は独特な「せつなさ」を漂わせていて、そ れがなんともいえず良いです。この曲があるからこのレコードを聴き続けるの では、と思ってしまいます。

そんな風にスタンダードでない曲をすんなり聴くことができるのも、企画ものっ ぽい感じはしますが、きっとこの面子だからなのではと思ってしまいます。 レコード全体を通してサムの存在が大きいのは間違いないでしょう。 要所に入って来るサムのマンドリンバッキング等は曲のアクセントを見事 に演出しているといった感じでこの辺りはさすがといったところでしょうか。 また、特筆すべきはトリシュカであります。テクニシャンとして名高い彼を僕は なかなか好きになれないのですが、このレコードではテクニックをひけらかさ ず、終止アンサンブルを意識しているように思え、好感が持てます。 そしてなんといっても素晴らしいのがラスです。なんて心地良いストロークな のでしょう。どうしたらこんな風に弾けるのでしょうか。例えば1曲目なんか ガンガンに弾きまくっているようですが、決してうるさくないです。 7曲目のギターバッキングも聴き逃すことはできません。素晴らしいです。

そんなこんなで私にとっては特別なレコードなのですが、アリソンにすれば若 気のいたりくらいの位置付けでしかないのかもしれません。現在の「Alison Krauss and the Union Station」に比べれば当然だろうけど演奏はラフだし、 なによりアリソンの歌もフィドルも若さを感じるし。現在の「Union Station」 はアリソンの好きな面子を集め、アリソンの目指す音楽を実現したとても完成度の 高いバンドになったと思います。そこには、一枚目の雰囲気なんかどこにも感 じとれません。それでも私は思うわけです。また、こんなレコードを作ってく れないものでしょうか、と。


↑top