Theater Archive
 札幌ロマンチカシアターほうぼう舎
第1回 瓶中闇雲捕物帳
第2回 星影の円舞曲
第3回 ペチカ
第4回 忘れ咲き彼岸花
第5回 薄紅の凡歌
第6回 かかし

第7回 砂時計
第8回 俯しのビアホール
第9回 天守物語
 
第8回公演 俯しのビアホール

1992年(平成4年) 7月20(月) 21(火) 22(水) 25(土) 26(土) 27(月) 28(火) 31(金) 9月1(土) 2(日) 3(月) 5(水) 6(土) 7(日) 8(月)
 札幌市北区八軒1条西1丁目 JR琴似駅前劇場
poster  ticket
作・演出 斉藤歩
照明 鈴木志保
調光 斉藤公寿 麻生博之
舞台美術 佐藤ルカ
舞台記録 川村瀬戸
舞台監督 鈴木昌裕
POSTER 横山敏宏
音楽 橋本幸
役者 中井清史 紅千鶴 桜太郎 鈴木志保 望月一也 松田啓 永利靖 久々湊恵美 森光太郎 林千賀子 田中美好 斉藤歩
(クレジットは公演当初のポスター・ビラ等に記載のもので、その後の加入・交替等を反映していない場合があることを御了承下さい)



俯しのビアホール(うつぶしのびあほーる)

前年末に「砂時計」の巡業公演を全て終え、明けて92年初頭。「昨年は巡業をやったので、今年はロングラン公演だ!」との方針が、舎長・斎藤より表明されました。
なるほど、巡業は実に良いですが、一箇所で腰を据えてロングラン公演ってのもこれまた良いですね。

併せて述べられた斎藤の決意は、「琴似の倉庫の空間を使い切る」。
なるほど、これまでも可能な限りこの空間を活用してきたつもりでおりましたが、まだまだ使い切っていないという思いが舎長の中にあったのでしょう。

そうして書き下ろされたのが「俯しのビアホール」。終了後、確かにやり切った感のあった夏芝居でした。

*

舞台設定の柱はタイトルにあるビアホールと、暗渠。
倉庫のコンクリートの床にモルタルを敷いて河を作り、そこに水を送ります。鈴木昌裕、渾身の作品。
橋なんかもあったりして楽しく、また明かりが落ちて灯籠が流れていく場面などは、切なくて胸が痛くなるほどでした。
「水」というのは、それだけでものすごい存在感ですね。

その灯籠を流す謎の未亡人を演じたのは紅千鶴。
肩の力の抜けた芝居は、彼女のキャリアの中でもベストと思われます。

一方、ビアホールに集う客は無茶苦茶なキャラクターばかりで、よくもこんな台本が書けるもんだと呆れて感心したもんですが、 他劇団等で長年コンビを組んでいた望月一也&松田啓、前作「砂時計」にて天井裏に潜んで砂を落とす任務を完遂した森光太郎、 まだ短大生でこれが初舞台、可愛いにも程があった久々湊恵など、ほうぼう舎に初登場という役者が多く、やってる我々も新鮮でした。

だからという訳でもないんでしょうが、中井清史はビアホールのウェイターを、斎藤歩はピアノ弾きを(←実際に弾けるし上手い)、田中美好はアル中の客を、そして永利靖は未亡人に心寄せる風変わり過ぎる男を と、馴染みの役者がそれぞれ出色の出来で演じていたように思っておりました。

ホール付きコーラスガールとして、story teller的に唄を歌った桜太郎、鈴木志保、林千賀子の3人は、私が殆ど嫌がらせのように作ってしまった難しい歌を見事に歌ってくれ、「よくもまあここまで・・・」と涙しました。
星の見えないこの街で 星の見えないこの店で
私の見た星 あの光
 あいつが擦ったマッチの火
 たばこにともすマッチの火
 オレンジの炎  あいつが私の星なのさ  >♪星の見えないこの街で
*

自分はこの年の4月に長過ぎた学生生活を終えて就職し、その後4年間を室蘭市で過ごしました。
札幌〜室蘭間は車で2時間半。もちろん稽古に参加できるのは休日だけで、制作現場に居合わせられないというストレスと不安は、殆ど恐怖感と言っても良いくらいのものでした。
勿論その時は、その後さらに東北→東京へと飛距離を伸ばしていくことなど知る由もなかった訳ですが、いずれにしても現場との物理的距離を埋められない中でどのように芝居に関わっていくかは、その後も自分の中の課題となっています。

* *

追加公演を含むロングラン公演を無事終えたほうぼう舎。
しかし斎藤歩が、この芝居を最後にほうぼう舎を去ることを表明しました。

言うまでもなく最大の激震です。
今後の話をして行く中で、劇団の存廃の話にも当然及びましたが、結果的には残った人間達で芝居を作り続けていくことになります。
一方、桜太郎、中井清史という旗揚げ期から柱であり続けた役者が、斎藤と共に劇団を去りました。

残る者と去る者、どちらが正しくてどちらが正しくないなんていう話では全くありませんし、それを話しても意味のないことです。
ただ振り返って思うことは、どちらにしても苦渋の決断だったんだろうなあということ。
あの頃は本当に辛かったなあ。


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